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GX-ETS制度設計始動(11)

GX-ETSの具体案に関して、有識者や産業界の意見を踏まえた検討を行うWGの概要説明シリーズ11回目。
第1回会合については、7回に亘って説明済み。

第2回会合は、8回から3回シリーズ。

今回は、10月31日に開催された、第3回会合の様子をお届けします。

1回、2回目は、産業界が中心のヒアリングでした。

1回目
・鉄鋼連盟
・石油連盟
・日本化学工業協会(日化協)
・電気事業連合会(電事連)
・WWFジャパン(WWFJ)

2回目
・セメント協会(セメント協)
・日本製紙連合会(製紙連)
・日本自動車工業会(自工会)
・定期航空協会(定航協)
・ 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)

1回目及び2回目における、業界団体の主張ポイントを再掲しておきます。

1回目
1.タイムフレーム
2.リーケージ
3.予見可能性
4.GXコスト負担
5.セクター毎の事情に配慮した設計

2回目
1.予見可能性
2.国内外各制度との整合性
3.過去の取組の評価
4.GXコスト負担
5.段階的導入

今回は、次の5団体。
業界横断的な組織、及び研究機関による海外のETSの概況説明でした。

・日本労働組合総連合会(連合)
・日本経済団体連合会(経団連)
・日本商工会議所(日商)
・日本エネルギー経済研究所(エネ研)
・電力中央研究所(電中研)

最初に事務局から、排出量取引制度の法的課題とその考え方について、経産省と環境省の合同会合である「GX実現に向けた排出量取引制度の検討に資する法的課題研究会」でまとめられた報告書(案)の説明がなされました。

内容としては「憲法上の論点」「行政法上の論点」「民法上の論点」「会計上の論点」及び「排出枠の市場取引に係る法的あり方に関する論点」の5つの論点の紹介及び考え方の紹介。

「憲法上の論点」の中で、条例に基づく排出量取引制度との関係や、排出量取引制度の目的とGX推進法の目的の整理、課徴金など制度の実効性確保のあり方、及び複数の訴訟が提訴されたK-ETSからの学び等のインプットがありました。

まぁ、、本会合は制度設計を議論する場ですので、報告のみといった程度でしたね。(私もよく分かりません(^^ゞ)

続いて、各団体の説明。
1、2回目の主張ポイントで、今回も3者共通して言及されたのは、次の3点。

1.GXコストの公平な負担
2.過去の実績の扱い
3.整合性のある制度設計

ただ、内容については若干異なっていました。

例えば、1.については、スムーズな価格転嫁ではなく、「自社が達成すべき削減量を取引先に付け替えることのないようにして欲しい」というもの。

スコープ3排出量においてカテゴリー1が占める割合は、どのセクターでも多くなっており、優先順位の上位に位置づけている企業も多いでしょう。

日商の調査によると、7割の企業がバリューチェーン排出量の削減に取り組んでおり、4社に1社が取引先に排出量の把握・測定を依頼しているとのこと。

排出量の報告のみならず、自社のカテゴリー1削減のために、排出量についても購買条件に入れられてしまえば、ノウハウやマンパワー、資金に乏しい中小企業にとっては死活問題というわけです。

2.については、個社レベルでは無く、排出量取引のベースライン設定の話。ETSでは過去一定期間における平均排出量をベースラインとし、それからの削減量を目標とする場合がありますが、それに対する配慮の要求です。

具体的には、ETS設計における、グランドファザリング方式かベンチマーク方式か、という議論につながっていくものです。

3.については、もちろん、省エネ法や高度化法などの「法律」との整合性もありますが、加えて東京都や埼玉県の排出量取引制度という「条例」との整合性について、3者全て言及していたのが印象的でした。

これについては、条例は施設単位でスコープ1・2を対象としているのに対し、国の制度は大規模発電所や工場が対象であり、スコープ1に特化していること。さらに、東京都はオフィスビルが多く、スコープ2がメインとなるなど、補完する制度であるとの説明が事務局からなされました。

他方、今回新たに指摘されたポイントは、次の3点。

1.国による移行支援、投資促進、産業競争力促進
2.制度対象者について
3.J-クレジットの活用

次回は、こちらの説明から入っていきたいと思います。
引き続き、お付き合い下さい。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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