GXリーグの目指す排出量取引制度(その1)
440社の賛同を得て、2022年4月1日動き出した「GXリーグ基本構想」
私も「賛同」したこともあり、以前ご案内しました。
22年9月からは、JPXにおいて、試行的な取引が始まりました。
実証期間は、2023年1月までで、売買の対象は「J-クレジット」及び「GXリーグにおける企業由来の超過削減枠」ですが、実際に取引できるのは「J-クレジット」のみ。午前と午後に1回ずつ、約定を成立させます。
条件が整えば「超過削減枠」も売買できるようにするようですが、あくまでも「シミュレーション売買」であり、実際の資金決済及びクレジットの移転は行われません。
JPXの「システム」の試行であって、「取引」の試行ではないようです。
さて、今回改めて採り上げようと思ったのは、2023年4月からのGXリーグ本格稼働に向けて、排出量取引に関する「学識有識者検討会」及び「賛同企業向け説明会」が実施されたからです。
EU-ETSのように、法的拘束力を有し、対象企業は参加が義務づけられ、罰則も規定されているような「排出量取引制度」は、全国的には実現しておりませんが、「試行的」な制度はいくつも行われてきました。
「乾いた雑巾理論」で経団連から突き上げられていた経産省は、そもそも反対の立場で、環境省が次々と形を変えて、矢を放っていました。
まず思い浮かぶのは、「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」
ここで使用されるクレジットは、今回のGXリーグでも使用可能な2種類
・目標超過達成分(超過削減枠)
・国内クレジット(現 J-クレジット)
に加え、京都クレジット(CER, JI)がありました。
具体的な削減につながったと思われるものとしては、「Japan's Voluntary Emissions Trading Scheme (JVETS)」があります。
報告ガイドラインが制定され、検証機関による検証も義務づけられていました。2005年から7期に亘って実施され、2013年に終了しています。各期毎に実績、取引結果が公開され、評価報告書も公表されていました。
ただ、こちらを見て頂くと分かるように、参加事業者数が限られており、日本のNDCを達成するためのカーボンプライシングとしての「排出量取引制度」たり得ないのが残念でした。
「排出量取引制度」では無いものの、削減目標を達成するために、「排出量取引」を仕組みとして取り入れているものは、多数存在していましたし、今も存在します。
環境省の実施する、削減量をコミットする設備導入の補助事業がそれに当たります。達成できない場合は、J-クレジットなどを購入する「排出量取引」で補填することが求められます。
JVETSと、同じように、計画作成および排出量の算定に当たっては、65認定を受けた検証機関による検証を受ける義務があります。
代表例であり、かつ、現在も実施中なのが、「SHIFT事業」です。
以前、ご紹介したので、記憶にある方もいらっしゃるかも。
「ASSET事業」として実施されていたものが、令和2年度に終了して、衣替えして始まりました。
「カーボンニュートラル」を達成するために、「排出量取引」を採用しているスキームもあります。
「カーボン・オフセット認証」「カーボン・ニュートラル認証」です。
環境省が制度管理者として行ってきましたが、平成29年3月31日をもって終了し、 4月1日以降はカーボンオフセット協会が引き継いでいます。
私は、この2つの認証制度や、先に述べたASSET事業の検証を実施してきたので言えますが、皆さん、真面目です(笑)。とても意識が高いです。
このように、やり方次第では、ボランタリーでありながらも、実効性のある取り組みにすることは、個人的には可能だと思っています。
以上のような、国内で過去実施されてきた「排出量取引」の知見を踏まえて、GXリーグで再度検討し始める「排出量取引制度」の草案をみてみたいと思います。