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目標設定から移行計画へ

2050年ネット・ゼロを目指すに当たって、中間目標年である2030年が近づくに連れて、計画段階から、リアルな削減を行い、実績を出していく段階に移行すべきというnoteを、書きました。

この文脈で、アップルの例が思い出されましたので、私なりの意見を述べておきたいと思います。

アップルが昨年、Apple Watchの特定モデルでカーボン・ニュートラリティを達成した旨を公表。マークをお披露目したり、Lisa Jackson (VP, Environment, Policy and Social Initiatives)が太陽光パネルを前に説明したり、「劇中劇」をやって見せたりと、相当の力の入れようでした。

アップルウェブサイトより

noteでご案内しておりますので、内容についてはこちらを参照ください。

他方で、この「カーボンニュートラル宣言」を始めとする、一連のアップルの脱炭素の取り組みについては、批判が上がっていることも事実です。

内容としては、次のようなものです。

目標達成の透明性
具体的な排出量削減計画や目標達成に向けた取り組みを十分に示していない
オフセットへの依存
自社の排出量削減よりも、オフセットによる目標達成を企図している
グリーンウォッシュ
アップルのカーボンニュートラル宣言は、環境への取り組みを誇張し、消費者を欺くためのグリーンウォッシュである

メディア報道等を元に著者作成

アップルはこれらの批判に対して、以下のように反論しています。

目標達成の透明性
サプライチェーン全体で排出量を測定し、削減するための取り組みを進めている。また、2022年には、環境報告書でサプライチェーン全体の排出量を初めて開示した。
オフセットへの依存
オフセットはあくまで最終手段であり、自社の排出量削減を優先している。また、オフセットには、植林や再生可能エネルギーへの投資など、環境に貢献するプロジェクトを選択している。
グリーンウォッシュ
トラッキング可能な透明性の高い方法で、ニュートラリティを達成しており、ウォッシュには当たらない。環境問題に取り組む企業として、リーダーシップを発揮していく。

メディア報道等を元に著者作成

技術仕様書を確認したところ、14040,14044,14067の記述はありましたが、ニュートラリティについて、ISO14068-1やPAS2060などへの言及はありません。しかしながら、自社努力による削減ファーストであることを明言していましたし、第三者検証を受けている説明もありました。

加えて、アップルは、「10年以内に二酸化炭素排出量を75%削減する計画で、残りの25%については、革新的な二酸化炭素除去ソリューションを開発する予定である」と、削減のパスを明らかにしています。

なので、アップルはPDCAを回しながら、削減パスにしたがって、着実にネット・ゼロに向かっていくものと考えています。

SBTiが「Commitment removed」というステータスを公表するようになったのも、目標を立てるだけではダメで、実際に削減すること、削減できる蓋然性があること、実行可能な削減計画、「移行計画(Transition Plans)」があることが重要であるというスタンスに移行している表れと言えるでしょう。

CDPも「移行計画」についてのレポートをリリースしたり、質問書に盛り込んだりしてきています。既に、実績を出すフェーズに来ているのです。

UKでは、2021年11月のCOP26にて、移行計画タスクフォース(Transition Plan Taskforce:TPT)が立ち上がっています。

UK以外にも、EU、米国、カナダ、日本、韓国などの国々において、それぞれ異なる名称や内容ながら、TPTと同様の目的で企業のカーボンニュートラル移行を支援する取り組みが進んでいます。

つまり「目標設定」から「移行計画」、TPTへとシフトしている段階と認識し、何よりもまず「移行計画」の作成に着手することをお奨めします。(もちろん、目標を立てるにも計画を立てるにも「算定」は必須です)

その上で、毎年自社が削減パスのどこに位置しているのかを確認し、適切に開示していくことが、お客様を始めとする、ステークホルダーの期待に応えることになります。IFRS S1・S2が求めるものでもありますね。

自社のビジネスがサスティナブルであるために、着実に歩みを進めていきましょう。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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