鉄鋼セクター別アプローチリリース(1)
SteelのSDAが、今年23年7月にリリースされてから2ヵ月が過ぎました。
SBTiのSDAのパイプラインも、完了に近づきつつありますね。
残るは、Oil and GasやChemicalなど、難易度が高いセクターですから、ロードマップ通りに開発が進むかは、不確定要素が多いですね。
ちなみに、SDAとは、目標設定方法の一つで、もう1つ、「総量削減アプローチ」というものが存在します。前者は「原単位」、後者は「総量」を目標設定の基準に取る点が異なります。
SBTiとしては、SDAが存在しないセクターの場合に総量削減アプローチを採用することを推奨しています。セクター固有の状況を考慮したアプローチですし、目標設定ツールも用意されているので、自社のセクター別SDAがある場合には、活用しない手はありません。
いずれも、スコープ1・2の長期及び短期の目標設定に使用できるアプローチです。
ちなみに、スコープ3の目標として、「サプライヤーに対するエンゲージメント」がありますが、こちらは、短期のみにしか使用できません。
さて、「Steel」セクターに特有な状況は主に2つあります。
1.については、製造にあたりCO2排出の多いプロセスを「Core system boundary」として特定し、そのプロセスが自社のスコープ1・2・3いずれであっても、算定対象とするという形で考慮されています。
スコープ3が算定対象外となるなら、コークス製造のような多排出プロセスを外注に出せば、スコープ3カテゴリー1となり、容易に自社の排出量を削減することができてしまいます。
昨年リリースされた、セメントセクターでも同様でした。
こちらは、クリンカー製造という最もCO2を排出するプロセスを自社内に所有せず、購入したとしても、算定がマストとなっています。
このように、自社で一貫してコンクリートを製造している会社であれば、「Clinker production」と「Cement production」における排出量は、スコープ1・2となるのは当然ですよね。
しかし、セメントを原料として購入すれば、カテゴリー1になります。
これを対象外としてしまうと、簡単に削減できることとなり、Steelと同様の状態になってしまうんですね。
セメントセクターガイドラインについては、6回に亘って説明しています。
バウンダリーの説明もしておりますので、よろしければ参照ください。
なお、上記のように、コンクリートはセメントから製造されますが、このプロセスが大量のCO2排出を伴うため、セメントを使用しないまたは使用量を大幅に削減する方法が研究・開発されています。
現在、以下のような代替材、技術が研究開発されています。
お客様の排出削減を支援する側としては、このような削減技術にも、キャッチアップしておきたいところですよね。
ということで、「Steel」セクターに特有な状況の1つ目をご案内しました。
次回は、2つ目、製造方法について配慮した例をご案内します。
よろしくお付き合い下さい。