インドネシアのカーボン・クレジット市場(1)
ウェブ上で完結するカーボン・クレジット市場を提供しているACX。
毎週発行されるマーケットレポートでお世話になっており、noteでご紹介したことがあります。ご関心のある方は、こちらを参照下さい。
そのACXは隔月で、国・地域のクレジット市場を深掘りしたレポートをリリースしているのですが、今回は「インドネシア」でした。
昨年より、アジア、特にASEANのカーボン・クレジット及びサスティナビリティ情報開示熱が高まっていることから個人的にも注目し、noteでもご案内していました。
まさにタイムリーでしたので、その概略を簡単にご紹介しようと思います。内容は、同国のカーボン・オフセット・プロジェクト、トップ・バイヤー、全体的な発行・償却の動向になっています。
まず、ステータス別のプロジェクト数から見ていきましょう。
4月現在、取引や使用可能なプロジェクト(Active)が80件弱、審査中(Pending)が44件となっています。全体数としては多いとは言えませんが、Inactiveが250件弱あるので、今年から来年にかけては300件程度の案件が取引できるようになるのでしょう。
続いて、利用しているクレジットスキームの割合です。
CDMが約3/4を占めていますが、これには、パリ協定6条2項ルールに基づいて創生されたコンプライアンスクレジットである、いわゆる「6.4ERs」は含まれていないはずなので、以降増加することはないはずです。
VCSやGSRの割合はよいとして、JCMが存在感を出しているのが特徴。
今でこそ、二国間クレジットは、スイスや韓国、インド太平洋など追随してきていますが、2013年に開始したJCMがその草分け。
2024年4月時点で29カ国と署名しており、温対法や環境省のSHIFT事業、GX-ETSなど、国内では「コンプライアンスクレジット」と位置づけられています。また、CBAMにおいても「EU-ETS」同等と認められるよう、動いているとかいないとか。
そんな、日本にとっても期待の星が、インドネシアで利用されているのは嬉しい限りですね。
GSRについて馴染みが薄い方も多いかと思いますが、このスタンダードは、もともと2003年にWWF(世界自然保護基金)とその他のNGOによって設立されたGold Standardが基になっていることから、この割合を占めるのは不思議ではありません。
なお、PLAN VIVOやGCCも、ご存知ない方が多いかと思いますので、概要と公式サイトを、ご案内しておきますね。
プロジェクトのセクター別ではどうでしょうか。
グラフを見ると、廃棄物処理(Waste Disposal)と再生可能エネルギー(Renewable Energy)で、CDMレジストリに登録された全クレジットの70%以上を占めていることが分かります。
ジャングルを擁するので、林業及び土地利用(Forestry and Land Use)や、農業(Agriculture)が多いかと思っていましたが、違うのですね。
グラフから内訳は分かりませんので、UNFCCC CDMプロジェクト検索ツールを使って調べてみました。いずれも、2023年12月末時点のデータです。
対象となるプロジェクトは、このようになっています。
結果については、次回お届けしようと思います。
引き続き、お付き合いください。