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第三者保証をどうするか問題(2)

政府は、GX-ETSの設計に向けて専門WGを設置し、3回に亘って、産業界・関係団体及び学識経験者ヒアリングを行ってきました。4回目は、事務局から具体化に向けた検討の方向性についての提示がありました。

それを受けて、委員からは「方向性」については異論無く、「具体化」の詳細について、それぞれの専門分野からの様々な意見、要望が出されたといった感じでした。

なので、事務局のレジュメを見ておけば十分だなと判断しようとした矢先、オブザーバーからの要望に対する事務局の回答が「想定外」だったので、取り急ぎ、ご報告したところでした。

そんな矢先、先日開催された第6回法的課題研究会で、まさしくその点を突いた質問がなされましたので、続報としてご紹介したいと思います。

もちろんアーカイブもあります。
2時間半の長丁場ですが、委員の先生方の意見・質問は、手短で的を射ており、事務局の回答も無駄がなく、通しで視聴する価値はあるかと。
高村先生のファシリテーションも素晴らしかったです。

さて、肝心の質問ですが、日本公認会計士協会 常務理事・公認会計士の男澤委員からのものでした。

第三者認証・検証制度について
- 会計監査は金商法に基づいて実施される
- 企業は、193条の2に基づく法定監査を受けるために、資格のある監査法人と契約している
- 監査には品質を定める自主規制があり、金融庁の監査も受ける
- 内部統制に依拠することにより、認証・検証が行える

実行するためのエンフォースメントがどうなるのか?

難しいのですが、言わんとするところは、こんなところでしょうか。

- 会計監査は「金融商品取引法」という法律に基づいて実施される
- 企業は、登録を受けた監査法人と契約し、法193条の2に基づく法定監査を受けている。
- 監査法人は金融庁の監督下にあり、品質について審査・監視される

第三者認証・検証において、どのようなルールに基づいて実施されるのか?

これに対する事務局の回答は、先日のnoteでご紹介したものと同じでした。

- 保証機関がみつからない、保証してもらえないということがないようにしたい
- 大きなチャレンジではあるが、保証機関の制度を同時に立ち上げ、無理のない制度としたい

検証についての個人的見解は、これまで何度となくnoteでコメントしてきましたが、もう一度。

財務情報とサスティナビリティ情報を同一視しないでほしい
会計監査と第三者検証の保証水準を同等にすることは現実的でない

サス情報開示が任意開示から法定開示となるのは既定路線ということで、監査法人は、人材をリクルートしたり、グループ会社から引っ張ってきたりして、サス情報の検証ができる体制を整えつつあると聞きます。

ですが、今まで監査を行っていた監査人からすると、サス情報も、会計のように「明確なエビデンスがあって当たり前」という意識があるのでは、と危惧しています。くれぐれも、与件を持って検証しないことを願います。

さて、男澤委員は、この点以外にも「公認会計士」という立場から、鋭い質問をされていました。

- 内部統制に依拠することにより、認証・検証が行える
- 監査であれば期初から期中に内部統制を検証、財務諸表が出た上で期末に監査実施
- いつ契約し、いつ検証するのか
- コストがかかることを考慮すべき、過度な負担があってはならない
- 現地検証はどうするのか
- 意見表明後に誤謬が判明した場合
- 事業者が訂正した場合、保証を取り直す必要があるのか
- 不正の状況があったらどうするのか

つまり、企業は、契約した監査法人によって一年サイクルで、監査を受けているところ、検証でも同様の制度とするのか。(そうでないと、内部統制が機能していることを監査できない)それであれば、相応のコストが発生するが、何がしらの措置がとられるのか、ということでしょうね。

また、契約期間にも関係しますが、意見表明後の変更や、不正・誤謬の発覚等、実施に当たっては詳細な設計が必要になることも、指摘されています。

こちらについては、事務局から明確な回答は無かったように思います。
というか、まだ議論されていないというのが本当のところかと。

この研究会では、クレジットの活用の在り方についても、質問がなされました。検証に加え、こちらも私の専門ど真ん中。次回は、議論の内容と個人的な見解をお届けしたいと思います。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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