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ボラクレ市場の現状 格付視点で見てみよう(1)

カーボン・クレジットの格付プラットフォームであるCalyx Globalが、市場動向データと500を超えるプロジェクトに対する自社のレーティングを組み合わせてVCM(Voluntary Credit Market ボラクレ市場)を分析したレポートを公表しています。

幸い、Carbon Creditが、サマリー記事を書いていたので、それを利用させて頂き、内容を簡単に紹介したいと思います。

なお、レポート本文は、こちらから参照できます。
インフォグラフィックスが豊富で、ページ数も少ないので読みやすいです。

まず、本レポートは、「VCMの質は、健全性向上の有望な兆候を示している」と結論づけた上で、「REDDや大規模な系統連系再生可能エネルギー・プロジェクトなどのメガ・プロジェクトが主流であるため、VCMでより高格付のクレジットを見つけるのは依然として困難」と指摘しています。

市場の信頼を回復するためには、より高品質なクレジットが必要

当たり前の主張で終わっていますが、まぁ当然かと。
これを踏まえた上で、内容を見ていくことにしましょう。

低品質炭素クレジットの発行減少

昨今の「カーボン・クレジット ブーム」は皆さんもよく知るところかと思います。創出したいという事業者の増加は肌感覚とも一致します。

他方、呼応するように高まったウォッシュ批判も、ご承知の通り。

しかし、レポートは、特に2024年の初めから、クレジットの質に顕著な変化が見られるようになったと指摘します。

VCM の質には大きなばらつきがあり、 分析対象の全セクターにおいて、低品質なクレジットと高品質なクレジットの両方が存在し、現在までのところ、製造・産業セクターのプロジェクトが最も「High-Integrity」だとか。

過去5年間に発行されたクレジットの半数以上を格付けしたこの分析によると、次のことが明らかになったそうです。

1.格付けの上位半分(C+以上)に入るクレジットは全体の約20%に過ぎない
2.Bランク以上のクレジットは全体の10%にも満たない
3.低格付けクレジット(Eランク格)の発行は大幅に(50%近く)減少した

1と2は、「大きなバラツキがある」証左で、高品質なクレジットを調達することの難しさを浮き彫りしています。他方、3については、よい傾向です。

ただ、この減少は主に、歴史的に低格付けに偏っていたREDD+プロジェクトからのクレジット発行が減少したことに起因するものだとか。

ウォッチできておりませんでしたが、直近では、このような報道もありましたので、そうなのかなと。

発行されたクレジットの発行年毎の格付比率の推移を示したのがこちらですが、確かに「大きなバラツキ」があったことは見てとれますね。詳しく見ると、低品質な「石」が大部分を占めていた状況から中品質な「石」へ移行している段階といった感じでしょうか。

それでも「石」であることには変わりなく、「玉石混交」となるには、もう少し時間がかかりそう。

2023年から2024年現在までのとの比較で、DやCランクが増えているのは、Cランクのクレジットが多い傾向にある「クックストーブ導入」といったクレジットが増えていることによるそうです。

上手から分かるように、クレジットの質は全体的に向上しているものの、高格付け(AランクおよびBランク)のクレジットは依然として稀である状況は変わっていません。

この希少性は、現在市場で積極的にクレジットを発行しているプロジェクトの数が少ないという「数」の問題と、これらの高格付けプロジェクトは、REDDや大規模な再エネプロジェクトのようなメガ・プロジェクトに比べ、規模が小さい傾向があるという「量」の問題に帰結します。

このような背景の下に、「高品質なクレジット」を生み出す環境は整いつつあります。

加えて、調達できる環境も、構築されてきています。

後は、創る側と送る側と買う側が、協調して動き出すか。
好循環に入ることができるか。

これからも、クロースウォッチしていきたいと思います。

ということで、レポートの輪読、現状把握、発行量推移についての考察までで終わってしまいましたので、次回は、クレジットの質の変化についてご案内していこうと思います。

お楽しみに。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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