見出し画像

非化石価値取引結果 24年度第1回

24年度1回目となる非化石価値取引市場の取引結果が、8月30日までに全て出揃いました。(約定日は、非FIT(再エネ指定無し)、非FIT(再エネ指定)、FITがそれぞれ、28日、29日、30日)

取引結果が公表される度にご案内しています。
前回の結果は、こちらを参照下さい。

まずは、約定量から見ていきましょう。
FITは23年度初回と比較して69.1%増と、過去最多を記録。
相変わらず活況を呈しています。

他方、非FITは、今回から全量トラッキング付になったこともあり、「再エネ指定」が23年度比2.8倍と飛躍した一方、「再エネ指定なし」は97.7%減に沈みました。

「再エネ指定」だとRE100に使用できますから、需要が集まるのは当然。「再エネ指定なし」はほぼ原子力と言えますが、こちらのバイヤーは、高度化法達成義務のある事業者のみ。バイイング・パワーが違いすぎます。

FITのスケールに合わせていますので目立ちませんが、はっきりと明暗が分かれました。

約定量

ご存知のように、非化石証書を購入できるのは、これまで電気事業者のみだったところ、21年度第2回目から、需要家や仲介者も購入できるようになりました。FITの約定量が、上図のように順調な伸びを見せている要因の一つとなっているかと思います。

温対法の報告において、自社のスコープ2排出量から控除するために購入されると思いますが、使用できる非化石証書及び量はご存知でしょうか。詳しく説明すると、次のようになります。

使用できる非化石証書の量は、報告年度6月の口座凍結時に非化石証書保有口座に所有する証書の量又は仲介事業者が発行する報告対象分の購入証書量の証明書に記載の量のうち、調整後温室効果ガス排出量の調整に使用する量です。

算定・報告マニュアルp.Ⅱ-274より

簡単に言うと、24年度の報告、つまり、25年7月に報告する際に使用したいのであれば、24年度第1回〜24年度第4回の入札で調達した非化石証書の内、25年6月30日現在の口座残高分、となります。

JEPXから下図のような残高証明書が発行されますが、これに記載されている「権利確定済残高」分を、自社のスコープ2排出量から控除できます。

「証書有効期限」が「20238/06/30」となっているのが見えるかと思いますが、これが「報告年度6月の口座凍結時」ということを意味しています。

240111_非化石証書のトラッキングに関する事業者向け説明資料(需要家対象) V1.1 5ページより

なお、購入した非化石証書量(kWh)から、控除できるCO₂量(t-CO₂e)を算定する方法など、その他詳しいことについては、こちらのnoteを参照下さい。

このことを踏まえて、先のFIT非化石証書の伸びを考えると、果たして、よく分かりません(笑)駆け込みでは無いでしょうし、早めに手当したと言えなくも無いかと。

落札率(約定量/売入札量)を見てみると、前回と比較して急伸し、50%近くに達していますので、買いが旺盛だったかと思いきや、売入札量が落ち込んでいるので、単に売がり少なかっただけとも言えます。

落札率(約定量/売入札量)

売入札量は、第1回から最終回の第4回にかけて徐々に増えていく傾向があるので、イレギュラーではありません。単純な季節要因ですね。

売入札総量

落札率(約定量/買入札量)を見ると、いつも通り100%。
買いたい人は、皆さん、希望数量調達できているということ。

落札率(約定量/買入札量)

なので、買入札総量=約定量であり、やっぱり「買い旺盛」との判断よいでしょうが、「何故」のクエスチョンはそのまま。

ちなみに、買入札総量を売入札総量とスケールを合わせるとこのようになり、23年度第4回からの伸びは小さく見えますが、1.7倍。ちゃんと、約定量の伸びと同じになってます。

買入札総量

とはいえ、ここで終わらせてはnoteの役割を果たせません。
なので、虫の目でなく、鳥の目で見てみると、あることに気づきました。
それは、JEPX年会費の大幅引き上げです。

2024年度、従来の12万円から60万円に引き上げられるのです。

取引所の運営コスト増加と市場の変動に対応するためのものであり、特に再生可能エネルギー証書取引の拡大といった新たな需要に対応するためのインフラ整備を目的としているとのこと。

「新たな需要」の最たるものは、非FIT非化石証書がFIT非化石証書と同様に、すべてトラッキング付きになったことでしょう。これにより、FIT・非FITの垣根が無くなり、調達の自由度が高くなるなど大きなメリットが得られますが、その対価を会員に求めるということでしょう。

この変更により、一部の小規模な会員が取引所を離れる可能性が指摘されていますが、逆に、積極的に取引する会員だけが残ることになり、今回の約条数の大幅な増加になったのではないか、というのが私の見立てです。

いずれにせよ、閑古鳥の鳴いていては、市場はその役割を果たすことはできません。JPXの「カーボン・クレジット市場」が良い(?)例でしょう。

会費を5倍に引き上げたのだから、相応のシステム拡充をお願いします。

さて、続いて、FIT証書の約定最高価格と最低価格です。
23年第1回以降、最低価格は0.4円/kWh、最高価格は、前回1.0円/kWhと若干上昇したものの、今回は0.6円/kWhと値を戻しています。

約定最高・最低価格

約定平均価格については、FIT、非FITいずれも、それぞれ最低価格の0.4円、0.6円に張り付いています。(FIT証書は0.41円/kWhですが)この傾向は、前回と変わらずです。

約定平均価格

最後に、入札会員数及び約定会員数はこちら。

入札会員数
約定会員数

「会員数は減ってないじゃないか」というツッコミもあろうかと思いますが、会費の引き上げ効果は、前回既に現れていたのでは?という見方もあるかもです。今回の増加は、60万を払っても取引したい、意欲的な会員が増えた結果なのではと。

ということで、勝手推測の報告になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。

非化石証書の全量トラッキング化を端緒として、今後、入札制度がどのように変遷していくのでしょうか。

見守っていきたいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!

園田隆克@GHG削減サポーター
もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。