ネットゼロを考える(その2)
前回は、「ネットゼロ」という概念が、大企業の間で浸透し始めたことにより、取り組みの要否について、意識されることが多くなったということを、お話ししました。プライム市場上場企業全てに対し、CDPが回答要請するようになったことなども遠因にあるのでしょう。
その「ネットゼロ」、相手を知らないとどうしようもない、ということで、その定義を確認しておきましょう。
各イニシアチブで定義されているように思われるかもしれませんが、大元はIPCCの用語集です。これに対し、それぞれ、必要であれば解釈を付け加えるといった形になっています。
それでは、大本営を見てみましょう。
これを受けて、Race to Zeroでは、以下の場合に、個々の主体がネット・ゼロの状態に達したと見なすとしています。
ここで、Race to Zeroの用語集で「オフセット」を見てみましょう。
「排出回避(avoided emissions)を含む」とあるので、Race to Zeroでの「オフセット」の扱いが気になりますが、釘を刺されています。
なお、バリューチェーン外の削減(Beyond value chain mitigation:BVCM)は、気候変動対策の現場でホットな考え方になっています。11月のCOP27でも注目されると思います。チェックされておくとよいかと思います。
ただ、こちらも同様に「但し書き」されていますので、念のため。
1.5℃目標に沿って削減を行っても、どうしても残ってしまう残余排出量が、2050年段階で10%残るとされ、ゼロカーボンを達成するために「中和」を行うとしています。ということで「中和(Neutralization」を見てみましょう。
「オフセットも含まれるが(May include offsetting)」が気になりますね。
でも、残念ながら「除去に限定され、残余排出量と同量をバランシングすることを要求する」とあるので、「残余排出量と同量を除去クレジットで中和する」ことが必要だと考えます。
以上から考えると、ネットゼロを達成すると言うことは、目標年の2050年に、残余排出量と同量の除去クレジットを用いて「ゼロ」にすることだと言えるでしょう。
なお、除去系に加え吸収系のクレジットも中和クレジットとして利用できると考えられます。GHGプロトコルでの検討結果が待たれますね。
ネットゼロの基準については、Race to Zeroのクライテリア及びガイダンスに加え、賛同するイニシアチブの基準を参考にされるとよいと思います。
賛同するイニシアチブの代表例として、SBTiのNet-Zero Standardをご紹介しておきましょう。
いかがだったでしょうか。
基準が乱立しているように思われるかもしれません。明確に記載されていないこともあるでしょう。そんな場合は、「合目的的」に判断しましょう。
目指すところは、「ネットゼロ」ですから。
「合目的的」については、こちらを参照ください。
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