![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/86176793/rectangle_large_type_2_cb31c6a8854a2ac9a5b0b302eeed6490.jpeg?width=1200)
ネットゼロを考える(その2)
前回は、「ネットゼロ」という概念が、大企業の間で浸透し始めたことにより、取り組みの要否について、意識されることが多くなったということを、お話ししました。プライム市場上場企業全てに対し、CDPが回答要請するようになったことなども遠因にあるのでしょう。
その「ネットゼロ」、相手を知らないとどうしようもない、ということで、その定義を確認しておきましょう。
各イニシアチブで定義されているように思われるかもしれませんが、大元はIPCCの用語集です。これに対し、それぞれ、必要であれば解釈を付け加えるといった形になっています。
それでは、大本営を見てみましょう。
人為的な温室効果ガスの大気中への排出が温室効果ガスの人為的な排出と人為的な除去が一定の期間において均衡すること。
これを受けて、Race to Zeroでは、以下の場合に、個々の主体がネット・ゼロの状態に達したと見なすとしています。
ある行為者が科学的根拠に基づく経路に従って排出量を削減し、その行為者に起因する残りのGHG排出量が、バリューチェーン内または有効なオフセット・クレジットの購入を通じて、その行為者のみが主張する同種の除去(例:化石炭素排出の永久的除去)により完全に中和されている場合。
ここで、Race to Zeroの用語集で「オフセット」を見てみましょう。
GHG排出量を補うために、行為者の外部の活動を通じてGHG排出量を削減(排出回避を含む)、またはGHG除去量を増加させ、行為者の世界排出量に対する正味の貢献度を減少させること。オフセットは、通常、炭素クレジットの市場やその他の交換メカニズムを通じて手配される。オフセットの主張は、関係する削減/除去が追加的であり、過大評価されておらず、排他的に主張されていることを含む、厳格な一連の条件の下でのみ有効である。さらに、オフセットは、残存する排出量と「同程度」の範囲でのみ、ネット・ゼロの状態を主張するために使用することができる。
「排出回避(avoided emissions)を含む」とあるので、Race to Zeroでの「オフセット」の扱いが気になりますが、釘を刺されています。
Race to Zeroにおいて、オフセットは脱炭素化の代替や遅延にはなりえないが、バリューチェーン外の緩和に貢献するために利用することができる。
なお、バリューチェーン外の削減(Beyond value chain mitigation:BVCM)は、気候変動対策の現場でホットな考え方になっています。11月のCOP27でも注目されると思います。チェックされておくとよいかと思います。
バリューチェーン(スコープ1、2、3)外の活動における排出削減・除去のための企業の投資。ネットゼロ以降の移行において、企業は、内部での排出削減や除去以上に、バリューチェーン外の排出を軽減するための行動をとるべきである。例えば、慈善事業による資金を緩和活動に充てたり、高品質の炭素クレジットを購入したりすることである。例としては、管轄区域やプロジェクトに基づくクレジット、メタン軽減プロジェクト、直接空気捕捉の研究開発への投資などが考えられる。
ただ、こちらも同様に「但し書き」されていますので、念のため。
バリューチェーンを超えた緩和は、企業内部の排出削減に追加するものであり、脱炭素化の代替や遅延になるものであってはならない。
1.5℃目標に沿って削減を行っても、どうしても残ってしまう残余排出量が、2050年段階で10%残るとされ、ゼロカーボンを達成するために「中和」を行うとしています。ということで「中和(Neutralization」を見てみましょう。
事業者の排出インベントリ外のGHG除去で、事業者の 世界排出量への正味の寄与が減少または消滅するよう に、残留するGHG排出のバランスをとること。中和の主張は、関係する削減/除去が追加的で、過大評価されておらず、排他的に主張され、同種のものであることを含む、厳格な一連の条件の下でのみ有効である。
オフセットも含まれるが、バリューチェーン外で行為者が行う、緩和に貢献するすべての活動も含まれる場合がある。
「オフセットも含まれるが(May include offsetting)」が気になりますね。
でも、残念ながら「除去に限定され、残余排出量と同量をバランシングすることを要求する」とあるので、「残余排出量と同量を除去クレジットで中和する」ことが必要だと考えます。
以上から考えると、ネットゼロを達成すると言うことは、目標年の2050年に、残余排出量と同量の除去クレジットを用いて「ゼロ」にすることだと言えるでしょう。
なお、除去系に加え吸収系のクレジットも中和クレジットとして利用できると考えられます。GHGプロトコルでの検討結果が待たれますね。
ネットゼロの基準については、Race to Zeroのクライテリア及びガイダンスに加え、賛同するイニシアチブの基準を参考にされるとよいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1662287538558-rzcnhrBjnJ.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1662287591428-DuQCJnUdVr.png?width=1200)
賛同するイニシアチブの代表例として、SBTiのNet-Zero Standardをご紹介しておきましょう。
いかがだったでしょうか。
基準が乱立しているように思われるかもしれません。明確に記載されていないこともあるでしょう。そんな場合は、「合目的的」に判断しましょう。
目指すところは、「ネットゼロ」ですから。
「合目的的」については、こちらを参照ください。
お悩みについて、少しでもお役に立てたら嬉しいです。
疑問質問、いつでもお待ちしています。
お気軽に、ご相談くださいね。
いいなと思ったら応援しよう!
![園田隆克@GHG削減サポーター](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/68962323/profile_1d66a4f6c06e6873abd9309a5d3f4220.png?width=600&crop=1:1,smart)