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ISSA5000を理解しておこう(2)
先日開催された、JICPA主催のISSA 5000に関するセミナーの内容を前回からお届けしています。
その中で使用しているレジュメは、こちらからダウンロードできます。
1回目は、「そもそもISSA5000って何?」という前段の説明に終始してしまいましたので、今回は、具体的な内容に入っていきましょう。
まず、サスティナビリティ情報開示における「保証業務」「保証基準」のグローバルスタンダードとなるものがIAASBの「ISSA5000」であることを思い出してください。そして、保証業務を行う人の「倫理・独立性」を規定しているスタンダードがIESBAの「IESBA Code」でした。(説明は1回目参照)
サスティナビリティ情報開示は、ルールが指定する「保証」を受けた後に、ルールに基づいた「報告」を行うものです。また、ルールが、情報を利用する側の目的に合致するか、公正かつ透明性の高いものになっているか、という視点で目を光らせるプレーヤーもいます。
「IOSCO」は、23年6月にISSBがIFRS S1・S2の確定基準を公表した1ヶ月後に、「Endorsement」したのがよい例です。これにより、企業は、安心してS1・S2に基づいた開示を行えるようになりました。
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このエコシステムの中で、IAASBはIESBAと共に「保証」の信頼性を担保するロールを担っているというわけです。
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なお、IAASBと
前回に引き続き、難しい用語が出てきましたので、説明しておきますね。
IOSCO(International Organization of Securities Commissions)
国際証券監督者機構として知られる、世界中の証券監督機関の国際的な組織。証券市場の透明性と効率性を向上させ、投資家保護を推進することを目的としている。
IFIAR(International Forum of Independent Audit Regulators)
日本語では独立監査規制当局国際フォーラムと訳される、各国の独立監査規制当局の国際的なネットワーク。監査の質の向上を目的として、情報共有や協力体制の強化を進めている。
両者とも、投資家や市場参加者の利益を保護を目的として、国際的な枠組みで活動、情報共有をしている団体ですが、次のような相違があります。
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一言で言うと、IOSCOは証券市場全体の信頼性向上を目指しているのに対し、IFIARは監査の質を通じて財務報告の信頼性を高めることを目的としている、といったところでしょう。
ただ、いずれも「財務報告」が対象であったところ、サスティナビリティ情報という「非財務報告」も対象に含まれるようになっていることに留意すべきですね。これからは、両報告が同等に扱われる時代になるのです。
さて、前回「サス情報に特化した基準に対する必要性が高まったことから、ISSA5000の開発が始まった」とお伝えしましたが、IAASBはまさにスピーディーに動いた、とSeidenstein議長は仰っていました。
と言うのも、CSRDは2026年からの適用開始が判明していたし、IOSCOからは2024年末までにフィックすることを要求されていたそうなのです。
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特徴としては、「どんな実務者でも使用できる」「全てのサス情報開示に使用できる」「限定的保証と合理的保証の両方をカバーしている」ことが挙げられます。
Jackson副議長が「サス保証業務のグローバルスタンダードを目指した」と述べられていましたが、まさしくその通りの内容になっているようですね。
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2023年7月から12月までのコンサルテーションでは、146通のフィードバックが寄せられたそうで、内容としては、不正の対処や重要性(Materiality)、保証水準、バリューチェーンについてが多かった模様。
これらを踏まえ、「財務報告と同等の信頼性を勝ち取る」ことを主眼に置き、比較可能性が担保された、質の高いシステムとなるよう、丁寧な議論を積み重ねたそうです。
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このように、スピーディながらも議論を尽くして開発した「ISSA5000」
目下、IAASBとしては、次の3点に注力していくとしています。
1.質の高い保証業務を支える
2.ISSAの信頼性を担保する
3.適用をサポートする
今後2、3年は適用サポートに注力するとのことで、早速、1月27日(月)にガイダンスがリリースされるそうです。繰り返し言及されていたので、もう完成しているのでしょう。また、必要があれば修正を行うとも言われていたので、フィードバックを届けることも無駄では無いかと。
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これ以外にも様々なアウトリーチ活動を予定しているとし、是非、YouTube、X、LinkedInをフォローしてほしいとPRしていました。
EFRAGやISSBもそうですが、欧州のスタンダートセッターは、普及推進にかける熱量が半端ないですね。
ということで、ISSA5000の紹介を、IAASB議長・副議長のプレゼを基に行ってきましたが、いかがだったでしょうか。
セミナーは、このお二人の基調講演の後、金融庁野崎課長によるサス情報の保証制度の動向説明、ドイツ及びフランスの事例紹介、パネルディスカッションと続きました。
間もなく、日本版S1・S2の確定基準も公表されますし、金融庁での議論も深まっていきます。GX-ETSの設計も進みますので、益々、検証の重要性が高まりますね。
タイムリーな情報をお届けしていきますので、ご期待下さい。
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