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LCA実践塾西表島合宿(2)〜海洋ごみのインパクト

前回から、「LCA実践塾」の西表島合宿レポートをお届けしております。
テーマは「海洋ごみ」と「オーバーツーリズム」
前回は、舞台となる「マングローブ」のしたたかな「適応戦略」の紹介をしたところで終わってしまっていました。

2回目は、「海洋ごみ」がもたらす「インパクト」をお届けします。

案内頂いていたのは、西表でガイドと言えばこの人の右に出る人はいない、西表島バナナハウス主宰ガイドの森本さん。

7月に刊行された学研の人気シリーズ「海のひみつ」のコラム「海の環境問題って?」の監修もされています。ネットで無料公開されていますので、お子さんと一緒に読んでみられてはいかがでしょうか。

最初に訪問したのは、①古見の浦でした。
次に訪れたのは、②ユチン海岸です。

森本さんお手製の西表島の地図

ここで目の当たりにしたのは、圧倒的な量の、ごみゴミ塵…..
もちろん、古見の浦でも相当量の漂着ごみはあったのですが、さらにそれを上回るごみが眼前に…..驚き以外の何物でもありませんでした。

マングローブにまとわりつく漂着ごみ

この海岸には、元々注ぎ込む沢がありました。(上段左の写真)
ところが、島の海岸沿いを走る道路が整備されたため、水の流れが変わってしまい、沢以外からも海岸へ雨水が注ぎ込むようになったとか。

すると、土壌の流出が発生。森の樹木同様、マングローブもしっかりと根を張ってこそ生きながらえるところ、土壌が洗い流されてしまえば、弱ってしまいます。

波は、相変わらず押し寄せては引いていきますので、どんどん浸食が進んでしまい、次々とマングローブは枯れる結果に。それが40年から35年前の話。

このような、土壌の浸食によりマングローブ林の後退が始まっていた頃、追い打ちをかけるように現れたのが「海洋ごみ」だといいます。まさに、弱り目に祟り目です。

マングローブの根(支柱根)は、一般の樹木と同様に、栄養分を吸収したり、体を支えたりしますが、それだけではありません。前回でも説明しましたが、選択的に塩分を除去したり、呼吸のための酸素を取り入れたりと、特殊な環境へ対応するために、重要な役割を果たしています。

そんな、マングローブの「生命線」に多量のごみがまとわりつくことで、「適応機能」が阻害され、みるみるうちに枯れていってしまったそうです。

ごみと言っても、軽いものばかりではありません。

水を含んだ漁網などは相当の重量があり、マングローブ自体を押し倒したりもするそうです。(下段左の写真)

「じゃぁ、みんなでごみを拾おう」と思っても、多量のごみは、マングローブ林の奥深くまで、くまなく入り込んでいます。人手でどうにかなるようなレベルではありません。また、次から次に押し寄せるのです。いたちごっこどころではありません。(上段右及び下段右の写真)

下の写真をご覧下さい。

上段左の写真の奥側が、上の写真でご案内した辺りです。
手前のマングローブは、まだ健気に踏ん張っている様子。
振り返ると、下段左の写真の光景が広がっています。
奥の方は侵食が進んでいませんが、時間の問題のようです。

忍び寄る侵食の影

マングローブが枯れてしまったら、海岸線を守るものはありません。
上段右及び下段左の写真のように、第二の備えのアダンが踏ん張ろうとしていますが、多勢に無勢でしょうか。

森本さんは、杭を打ち込んでごみが侵入しないようにすれば、状況は改善すると考えているようです。効果は無いという人もいましたが、いずれにせよ、捨て置けない、一刻を争う状況ということは明らかでした。

西表には多くのヤドカリが生息していますが、悲しいことに、貝ではなくプラスチック製のキャップやボトルの破片、その他のごみを使うことがあるそうです。左の写真は、オカヤドカリ。幸い、貝を背負ってます(^^ゞ

ヤドカリは自分の体を守るために、フィットする殻を探しますが、プラスチックの破片がちょうど良いサイズや形状だと、それを選んでしまうのでしょう。プラスチックは軽量で硬いので、一部のヤドカリにとっては適切な代替品と感じるのかもしれません。

ですが、有害物質を含んでいることもありますから、ヤドカリの健康に影響を与えることもあるでしょう。また、ヤドカリの海岸生態系での役割を考えると、生態系全体への影響も懸念されます。

森本さんによると、一番厄介なごみは、重りだそうです。(右の写真)
ご想像の通り、鉛を使用していることから、触ることも憚られます。
こんなものが、散乱していると考えるだけで、恐ろしいですね。

ということで、「海洋ごみ」の脅威に晒されている西表の、ほんの一部分を見てきた訳ですが、これだけでも、その深刻さ、インパクトの大きさは、痛いほど分かりました。

「離島は日本の縮図」であり「離島の問題は日本の問題」

自分たちにできるのは何なのか。
深く考えさせられた、視察となりました。

次回は、2つ目のテーマ「オーバーツーリズム」について、西表財団の徳岡事務局長にお話を伺いましたので、そちらをご紹介しますね。


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