ESRS導入ガイダンスのドラフト公開(1)
7月末、欧州委員会がESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サステナビリティ報告基準)の最終版を公開したことは、ご承知でしょう。
これについては、それに先駆けて、欧州委員会からドラフトを作成したEFRAG(European Financial Reporting Advisory Group:欧州財務報告諮問グループ)に対し、EFRAG案からの修正内容を説明した際、ご案内済みです。
ESRSはCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)に基づいてサステナビリティ情報を開示する際のルールとなるものですが、CSRDの前身であるNFRD(Non-Financial Reporting Directive:非財務情報開示指令)とは大きく異なる点がありました。
それは、NFRDが任意開示だったのに対し、CSRDは法的開示となったことです。
加えて、NFRDでは、従業員500名以上のEU規制市場に上場している大企業及び銀行の11,700社が対象だったところ、CSRDでは上場している中小企業を含む50,000社へ大幅に拡大されました。
導入は、4段階に分けて行われます。
ですので、対象企業への認知及びキャパビルのため、欧州委員会のメイリード・マクギネス金融安定・金融サービス担当委員は、2023年3月、ESRSの第一セットに関する実施ガイダンスを作成するよう公式に要請していました。
それを受けて、EFRAGは教育パッケージとして、ショーバージョンとフルバージョンの2種類の動画及びガイダンスを作成、公開していました。
しかしながら、こちらは、2022年11月のドラフト段階の資料でした。
個人的にはこの教材で支障ないと思いつつ、大本営から追加の資料がリリースされないかと思っていたところ、めでたく、修正点にフォーカスしたガイダンスが明らかになりました。
ただ、まだこちらはドラフト段階。なので、EFRAG SRB 会合において議題にされ、資料として提出されたものが、ウェブサイトで参照できるようになっているに過ぎません。
前回のように、華々しいデビューとなるかは分かりませんが、まずは、このドラフトを読み込んで、理解を進めていきたいと思います。
上記のサイトからダウンロードできますが、分かりにくいですね。
「5.Value Chain Implementation Guidance(VC IG)」と「6.Materiality Assessment Implementation Guidance(MA IG)」の「Documents」にある、4つの文書です。
cover noteで、目的や背景を把握した後、本文に当たるとよいです。
noteでご案内したように、EFRAGのドラフト案からの大きな変更点は「一部の開示を任意」としたことでした。
「自社にとって重要と判断した」もの、つまり「マテリアル」だと判断したもののみ開示すればよいとなったのでした。下図のように、ドラフトでは「ESRS E1 Climate」は開示が義務とされていたところ、修正案では「重要性」に応じて開示すれば良くなっています。
そして、「マテリアル」か否かを判断するのは、バリューチェーン全体。
ですので、欧州委員会はEFRAGに対し、「Value Chain:VC」と「Materiality Assessment:MA」の「Implementation Guidance:IG」を優先して作成するよう要請したのでしょう。
ということで、回を改めて、こちらの文書は読んでいきたいと思います。
短い文章ですので、是非皆さんもチャレンジされてみて下さい。ではでは。