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証書・クレジットと省エネ法

証書とクレジットの違いと、それによる使い方の違いを、温対法の報告にフォーカスしてお伝えしましたが、「省エネ法だとどうなるの」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

これについても、証書とクレジットの違い同様、温対法と省エネ法の違いを理解すると「なるほど」と合点がいくかと思います。簡単に説明しますね。

省エネ法は、日本の省エネ政策の根幹となるもので、石油危機を契機に1979年に制定されたもの。対象事業者には、エネルギーの使用状況等について定期的な報告が義務付けられており、工場や建築物、機械・器具についての省エネ化を進め、取組の見直しや計画の策定等を行わなければなりません。

なので、基本的には「化石燃料を効率的に利用すること」により、「化石燃料の使用量を削減すること」が法目的だったのですが、2011年の震災では需給が逼迫、電力の使用量である「kWh」を抑えるという「合理化」に加え、ピーク電力「kW」も抑えることが急務となりました。

ということで、「電力需要の平準化」が2013年の改正で盛りこまれたことから、目的が「合理化」だけで無くなってしまい「エネルギーの使用の合理化に関する法律」となったという経緯があります。

さらに2023年改正では、「化石エネルギー」だけで無く、「非化石エネルギー」も「エネルギー」となってしまいました。加えて、化石燃料から非化石エネルギーへの転換を促すことも、目的となりました。

ですので、さらに名称が、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」と変更されたという、歴史があります。

23年改正については、6回に亘ってご案内しておりますので、詳しくはこちらをご参照下さい。

他方、温対法は1997年のCOP3で採択された、京都議定書を担保するために1998年に制定されたもので、GHG排出量を削減することが目的の法律です。ですので、GHG排出量削減に繋がる取組は評価されます。

この視点で、証書とクレジット(削減回避系)を見てみましょう。

証書は、CO2を排出する化石燃料由来の電力の代わりに、再エネ電力を使用することによる「環境価値」を証書化したもの。クレジットは、高効率機器への更新により削減(回避)できたGHG排出量をクレジット化したもの。

いずれも、日本全体の排出量削減には寄与していますので、温対法の報告では、自社の排出量から控除できることになります。(証書は、他者から供給された熱・電力による排出量からしか控除できませんが)

しかし、省エネ法は「エネルギー使用の効率化」が法目的であり、その進捗を確認する手段が定期報告ですので、原油換算の「生」の使用量の報告を求めています。(とはいえ、今般、重み付け係数を乗じるなど、「生」とはいえない数字にはなっていると思いますが)

なので、証書やクレジットで「生」のデータを変更することは、法目的に照らして妥当ではないのです。しかしながら、23年改正で、法目的が追加されました。「非化石エネルギーへの転換の促進」です。

23年法改正では、エネルギーの定義の見直しもされており、非化石エネルギーも「エネルギー」とされており、定期報告に含まれるようになったのですが、その報告に「非化石エネルギー」として加算できるようになります。

つまり「非化石エネルギー使用割合」の増加という形で評価してもらえることになるのですね。

2022年度 第1回工場等判断基準WG 改正省エネ法の具体論等について より

証書に加え、J-クレジットも使用できるのですが、次の方法論に限られることに注意しましょう。

再エネ電力由来J-クレジット
再エネ熱由来J-クレジット
EN-S-019、EN-S-043、EN-S-044の方法論に基づいて実施される排出削減プロジェクト由来J-クレジット(非化石エネルギーを活用するものに限る)

J-クレジットは、経産省・環境省・国交省がスキームオーナーであるところ、環境省は全ての方法論が報告に使用できるのに対し、経産省は渋いです。上記以外は、省エネクレジットが、共同省エネルギー事業として報告できるのみです。

省エネクレジットは、自社の「エネルギーの効率化」には寄与しないものの、他者の効率化には寄与しており、国全体の効率化にも寄与しているので、ある意味法目的に合致しているところ、森林吸収系クレジットは関係ないですから、まぁ、仕方ないところでしょう。

ということで、省エネ法における証書及びクレジットの扱いについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。

少しは、証書やクレジット、省エネ法、温対法を身近に感じてもらえるようになったら、幸いです。

こんな感じで、これからも些細な疑問にお答えしていきたいと思います。
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園田隆克@GHG削減サポーター
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