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パリ協定6条の現在地(1)

アゼルバイジャンの首都、バクーで開催されるCOP29まであと2週間。
この時期になると必ず開催される、IGESの直前ウェビナーシリーズ。
今年も、10月から直前まで、5回にわたって開催されます。

その中でも、一番頼りにしているのが、小圷 パリ協定6条実施パートナーシップ センター長の、パリ協定6条に基づくクレジットの解説です。

「パリ協定6条実施パートナーシップセンター」とは、パリ協定6条に関する能力構築を支援するため、環境省が、昨年のCOP27において立ち上げた「パリ協定6条実施パートナーシップ」の活動を促進する事務局で、2023年G7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合において設立されたもの。

運営はIGESに委託されており、そのセンター長である小圷さんが解説されるセミナーなので、一番信頼ができる情報源となります。加えて、20年に亘って関わっておられるので、大本営発表と言っても良いでしょう。

このシリーズは、クレジットについて熟知した方向けと言って良いので、予備知識の無い方には、全く分からない内容かと思いますので、要点だけお伝えしたいと思います。

そもそも、「パリ協定6条とはなんぞや」から入りましょう。

カーボン・クレジットについて聞き及んだことのある方なら、「ボラクレ」とか「Verra」とか「GS(ゴールドスタンダード)」といった用語には、接したことがあるのではないでしょうか。

「ボラクレ」とは「ボランタリークレジット」の略称で、自主的な削減に使用することのできる「カーボン・クレジット」を意味し、その代表的なスキームが「Verra」の「VCS」であったり、「GS」だったりします。

「ボラクレ」の反対は、「コンクレ(コンプライアンス・クレジット)」であり、削減が義務化されている市場(コンプライアンスマーケット)において使用することができる「カーボン・クレジット」です。

その代表的な、スキームを提供するのが、「パリ協定6条」となります。
コンクレの大本営ルール、といったところでしょうか

COP29直前ウェビナーシリーズ 第2回「パリ協定6条実施に向けた取り組みと炭素市場の今」(IGES)4ページ

6条には、2項、4項、8項があり、上図のように、2項の中に4項があり、他国で実施した削減努力を国別目標(NDC)あるいは国際的な緩和目標(例えばCORSIA)のために活用するガイダンスとなっています。

2項に基づいたクレジットとしては、JCMなどの二国間の取組に基づくクレジットがあり、4項に基づいたクレジットには、6.4ERs(正式名称が決まっておらず6条4項に基づいたクレジットという意味)や一定条件下CDMから移行されたCERsが含まれます。

COP29直前ウェビナーシリーズ 第2回「パリ協定6条実施に向けた取り組みと炭素市場の今」(IGES)5ページ

2050年ネット・ゼロを達成するためには、まずは、自助努力による削減ファースト。ですが、特に途上国などでは、削減資金が不足します。

もちろん、途上国に対する先進国による資金拠出がパリ協定9条に規定されているとはいえ、不十分であることから、クレジット(市場メカニズム)の役割は重要です。

また、2050年に至っても、10%程度はどうしても減らすことのできない排出量(残余排出量:Residual emissions)が残ることから、吸収除去系クレジットによる中和が必要。

COP29直前ウェビナーシリーズ 第2回「パリ協定6条実施に向けた取り組みと炭素市場の今」(IGES)7ページ

つまり、ネットゼロ達成の鍵となるのが「パリ協定6条」ルールなのです。

ということで、「パリ協定6条」をザックリとご案内しました。
これでも「???」だとは思いますが、繰り返しご案内していきます。
疑問質問をご遠慮なくお寄せ下さい。

次回は、COP29における6条の主な論点について説明したいと思います。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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