ISCCに期待するところ
GHGに関する妥当性確認及び検証を行う機関に対する要求事項を規定する「JIS Q 14065:2011(ISO 14065 2007)」 というISOがあります。(ISOは英語ですので、それを和訳したで JIS規格としたものが JIS Q 14065)
JAB(Japan Accreditation Board 日本適合性協会)は、この14065の要求を満たす妥当性確認・検証を行う機関の能力を認定しており、現在のところ、認定を受けている機関は6機関となっています。
その14065に、「箇条9 異議申立て」および「箇条10 苦情」という要求事項があります。
JABに14065認定を受けている検証機関はもちろんのこと、受けていなくとも、検証業務を実施している機関であれば、これに準ずる体制をとっているはずです。
ですので、要求事項に基づいて、依頼者からの検証結果に対する異議申し立てや苦情を処理する手順を整備していることになります。
このプロセスは、何も検証機関だけに求められるものではありません。
プログラム実施計画書を認定して登録、実績確認結果を受けてクレジットを認証する、プログラム運営主体についても同様の体制整備が求められます。
そこには、14065のような明確な規格はありませんが、ステークホルダーだけでなく、環境NGOやイニシアチブ、メディアなどから厳しい目が向けられ、ウォッシュと批判されることもある訳で、だからこそ、一層厳格な内部統制が求められます。
ウォッシュについては、VerraがGuardianとやりあったことがあり、以前紹介したところです。
という、事前知識をお伝えした後で、この事例を紹介したいと思います。
ISCC(International Sustainable Carbon Certification:
国際持続可能性カーボン認証)とは、トレーサブルで森林破壊のないサプライチェーンのための持続可能なソリューションを提供する認証スキームとして設立されたものです。
グローバルなサプライチェーンにおいて、あらゆる種類のバイオマスの環境的、社会的、経済的に持続可能な生産と利用の実現に貢献することを目的としています。
ISCCについては、以前のnoteを参照下さい。
その、ISCCに対して、インドネシアやマレーシアから供給される廃棄物(POME;Palm Oil Mill Effluent パームオイル搾油廃液)等を原料とし中国で生産されたバイオディーゼルが急増しており、理由として偽装を疑う情報が寄せられたというものです。
22年後半から急増し、23年1月と2月にピークを迎えたそうで、原料調達及び製造フローに疑念があるとしており、もし事実であれば、欧州のバイオ燃焼市場に深刻な影響を及ぼすことになるそうです。
これを受けて、ISCCは原産地で追加のアセスメントを実施すると共に、担当者を派遣し、監査法人の能力拡大に着手したそうです。加えて、システム文書のアップデートも実施、ISCC要件の強化を行ったとしています。
加えて、不正行為の疑いがあるプレイヤーに対して「抜き打ち監査」を実施。併せて、中国とシンガポールの監査法人に対し遠隔地からデータを確認し、その結果に基づいて更なる選別を行う予定だとか。
なお、監査の結果「クロ」と判断されたインドネシアとマレーシアの複数の証明書は、すでに取り下げています。
ちなみに、取り下げられたユニットのリストはこちらで参照できます。
除外された事業者こちら。
何と、除外された検証人リストもあるのですが、こちらはさすがに、ISCCに登録していないと参照はできないようです。
このように、皆さんもよくご存知の、QMS が規程する「修正」と「是正措置」が適切になされているところを見ると、ISCCのマネジメントシステムも適切に機能しており、ISCC認証を受けたクレジットにウォッシュが混じる可能性は非常に低いと判断して良いかと考えます。
2050年にNet-Zeroを達成するためには削減努力では無理で、残余排出量が残ってしまう。それを、中和するためには、カーボンネガティブとなる除去・吸収系のクレジットが必要である点は、UNもIPCCも認めるところ。
この中和に利用できるクレジットの市場が健全に成長するためにも、ウォッシュを排除し、高品質なクレジットが多数創生されなければなりません。
そのためには、作る側だけでなく使う側も、賢くならなければなりません。
適切な選択ができる情報提供を、これからも続けていきたいと思います。
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