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非化石価値取引結果 23年度第3回

23年度3回目となる非化石価値取引市場の取引結果が、2月29日までに全て出揃いました。(約定日は、非FIT(再エネ指定無し)、非FIT(再エネ指定)、FITがそれぞれ、27日、28日、29日)

取引結果が公表される度にご案内しています。
前回の結果は、こちらを参照下さい。

まずは、約定量から見ていきましょう。
FITは継続的な需要があるところ、非FITは前回喪失した需要が戻らず。

約定量

従前この市場では、2つの異なる価値の調達のために証書が取引されていました。一つが小売電力事業者が調整後排出量を算定するために使用する「再エネ価値」、一つが発電事業者が高度化法の義務を達成するために使用する「非化石価値」です。

これを受けて、まとめて「非化石価値取引市場」としていたものを、次の2つに分類したのです。

電力・ガス取引監視等委員会 プレスリリースより

ですので、非FIT証書は発電事業者しか買い手がいないところ、「すでに達成義務分は手当済みなので、需要がない」という事情かも知れません。

続いて、落札率で見てみましょう。

落札率(約定量/売入札量)

こちらは、約定量/売入札量ですが、非FIT(再エネ指定なし)は、前回のほぼゼロからは若干戻して14%。FITの方も10%なので、「FITも需要がないのか?」と思いきやさにあらず。

後掲しますが、売入札量が、非FIT(再エネ指定なし)が約20億kWhなのに対し、FITは約810億kWhと20倍もあります。なので、需要がないのではなく、売りが多すぎるという状況なのです。

落札率(約定量/買入札量)

これが、約定量/買入札量を見ると、非FITは再エネ指定、指定無しいずれも、100%。なので、非FITは買い手がいない一方、FITは売り手が多すぎるというのが、こちらからも分かる訳です。

なお、落札率算出のベースとなった、売入札総量及び買入札総量はこちら。

売入札総量
買入札総量

JEPXは入札会員数及び約定会員数はこちら。

22年度第3回目(紺色)から急増しているのは、小売電気事業に加え、需要家や仲介業者も購入できるようになったためですが、FITについては、1回目→2回目:+24人、2回目→3回目(今回):+21人と、継続して増加しています。証書の活用が主要な手段として認知されてきているのではないでしょうか。

入札会員数
約定会員数

なお、入札会員数と約定会員数は、ほぼ同数になります。

入札に参加するにはJEPXの参加資格を有する必要があり、コストがかかってしまいます。ですので明確に取引する意思がないと、普通は参加しません。当然の結果ですね。なお、代行してくれる業者が多数ありますので、そちらを利用するのがお奨めです。ご参考まで。

価格については、FIT、非FITいずれも、それぞれ最低価格の0.4円、0.6円に張り付いています。約定量/売入札量を見れば当然。市場原理が働いている証拠です。この傾向は、前回と変わらずです。

約定価格

さて、皆さんご存知のように、JPXが「カーボン・クレジット市場」を開設、10月11日から取引を開始しました。

まずはJ-クレジットのみが対象となっていますが、ISO14068−1がリリースされたり、各国で取引市場が立ち上がったりと、ボランタリー/コンプライアンス、いずれにおいても注目されている「カーボン・クレジット」ですので、継続的にウォッチしておくのもよいかと思います。

その「カーボン・クレジット市場」スタートダッシュは決めました。

8営業日で累計10,044t-CO2の売買高。森林吸収系を除くと、小粒が多いクレジットですので、悪くはないかと傍目に見ていました。が、やはり「ご祝儀相場」だったようで、参加者によるシステムチェックが一巡すると、じり貧に陥りました。

前回のnoteでもご案内したように、売買の区分については、第三階層は指定できないことから、目的に合致しないクレジットを引き当てるリスクを負いたくないという心理から、入札を控えたものと推測します。

例えば、RE100に使用しようとして、再エネクレジットの買いを入れたものの、条件に合致しない電源によるクレジットだったりすれば、金を捨てるようなもの。売買成立した後しか、銘柄が明らかになりませんから。

JPXウェブサイトより

まぁ、私の予想が外れていたとしても、盛況でなかったことは明らかで、ここにきてようやく、累計売買高が10万t-CO2を超過したそうです。

JPXウェブサイトより

2月29日までを目処としていた「マーケットメイカー制度」の試行的実施の効果はいかほどだったのでしょうか。

クレジットや証書については、この他にも、民間企業が私設市場の開設に乗り出してきて、徐々に利用しやすい環境が整ってきています。加えて、海外、特に東南アジアで取引市場設立が続いています。

JEPXが年に4回行っているこの入札も、そのような多様なマーケットの影響を受けてくるものと思われますが、使い勝手はかなり異なります。

品揃えはもちろん、支払方法や無効化処理、調達量、RE100対応可否等々。
価格以外にも、自社にとっての優先事項を把握した上で、活用しましょう。

個人的には、自社のバリューチェーン外に視野を広げ、地球全体の排出量削減に貢献できるBVCMを推し進めるべく、もっとクレジットを活用してもらいたいと願っています。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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