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排出量算定〜バウンダリの設定

算定の第一歩は「目的設定」であることを説明しました。

以降の話は、「GHGプロトコルに基づいて算定し報告する」という前提で話を進めていきますので、ご了承ください。

さぁ、次こそは計算だー

とはならないのが、この業務。
そうですね。「何を」算定するかを決めないと、ダメですよね。
「算定対象範囲(バウンダリ)」を決める必要があります。

対象範囲としては、以下の2種類の境界を考えます。
1.組織境界
2.活動境界

「1.組織境界」は前回チラ見せした、こういうことです。

サプライチェーン排出量算定に関する実務担当者向け勉強会(環境省)より

ただ、これも目的次第なので、特定の事業についてであれば、その事業に係わる事業部や、関係会社。特定の製品であれば、その製品の製造に係わる部門やサプライヤー。というように、読み替えましょう。

いずれの場合でも、算定対象の組織を特定した後は、
1.出資比率基準
2.支配力基準
のどちらかを選択します。

さらに、2を選択した場合は
1.経営支配力
2.財務支配力
いずれの基準で算定するかも選択する必要があります。

自社以外の排出量は、按分して報告する必要があるからなんですね。
じゃぁ、どんな基準に従って決めればよいのでしょう。

こればかりは、各社事情が異なりますから、何とも言えません。
GHGのコーポレート基準にもこうあります。

自主的なGHG排出量の公表において、出資比率基準、または2つの支配力基準のどれを選択すべきかに関しては提言するものではない。ただ、事業者が出資比率基準か支配力基準のどちらかを個別に適用して排出量を算定することを勧めるだけである。事業者は、自らの事業活動とGHG排出量算定報告の要求事項に最も適した基準を選択する必要がある。

コーポレート基準

このことはすなわち、GHG排出量の算定と報告における5原則の一つ
目的適合性(Relevance)」に基づくことに他なりません。

加えて「いったん連結方式を選定したならば、その方針を組織の全てのレベルにおいて適用しなければならない(コーポレート基準)」ことに注意。

これは、5原則の「一貫性(Consistency)」ですね。

「2.活動境界」は、自社の事業と関連のある排出量を特定すること。
つまり、直接排出量(スコープ1)を特定し、算定対象とする間接排出量(スコープ2及び3)を選択することです。

算定企業は、報告について2つのオプションを持っています。

ですが、CDPの回答やSBTi申請を目指すのであれば、「2」を選択しない選択はないでしょう。いずれやらざるを得なくなりますので。

算定と報告は別です。
算定はしておいて、目的に応じて、スコープ3を報告するしないを選択すればよいのです。「目的適合性」に基づくというのは、こういうことですから。

でも、スコープ3の算定って大変なんだよなぁ。
完全性(Completeness)」「正確性(Accuracy)」なんて無理無理。
身構える方も多いかもしれません。
そんな方に、スコープ3基準からこちらの表現を紹介しましょう。

本基準は、一つの企業の経年に伴うGHG排出量を比較できるようにするために使用することを意図している。複数企業が、スコープ3排出量に基づいてそれら企業間での比較を行うことは意図していない。

スコープ3基準

算定対象は報告企業が合目的的に決めるものだし、事業規模や構成も異なる。インベントリーの方法論も違う。報告排出量が異なるのは当たり前。だから、比較するものではないですよ。

プロトコルも、こう明言しているんです。安心して下さい。

ですが、「透明性(Transparency)」は確保して下さい。
用いた仮定を開示し、使用した算定・計算手法や情報源の出店は明らかにすること。検証を受ける際に、トレースできるレベルで、客観的かつ首尾一貫した形で開示しましょう。

次回は、ようやく「算定業務」に入っていきたいと思います。
スコープ1、スコープ2、スコープ3。
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。


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