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14065認定についての独り言

GHGに関するJISの「ファミリー規格」については、皆さんも良くご承知かと思います。重要になるのは、JIS Q 14064−1、14064−2、14064-3及び14065の4文書です。

本家のISOは、このように、2018年から2020年にかけて改訂がなされていましたが、実際の業務で使用するJISは、改訂が遅れておりました。

JIS化されたISOは、単なる翻訳版ではなく、国内の事情(日本語の意味合いや、使用のされ方、認識・認知の程度など)を考慮されたものです。

ですので、ISOが改訂されてからJIS化されるまで、タイムラグがあるのが普通で、上記の4規格も例外ではありませんでした。

ようやく改訂版がリリースされたのが2023年で、この際には、noteにて変更点を中心にご案内しました。よろしければ、ご参照下さい。

このシリーズで言及していなかったのが、妥当性確認及び検証を行う機関に関する要求事項である、JIS Q 14065。これまでは、公益財団法人 日本適合性認定協会(JAB)が、14065の要求事項を満たしている機関として認定し、ウェブサイトで開示していました。

旧JABウェブサイトより

2023年4月28日現在、わずか6機関であり、「14065認定機関(以降65認定機関)」による検証を要求する制度が増えると対応できなくなるのでは、と危惧しておりました。

ところが、現在のJABのウェブサイトでは、認定機関のリストではなく、「認定機関による検証を求める制度」毎に、検証を実施できる機関を表示する形に変わっております。

JABウェブサイトより

フィルターに表示されている、4種類の検証が「65認定機関による検証を求める制度」なのですが、どこにも「65認定機関」の表示がありません。数も、昨年よりも1機関減ってしまっています。(5機関は、いずれも4種類の検証が可能です)

これだけであれば「さらに減って大変になるなぁ」ですが、旧サイトでは「65認定機関による検証を求める制度」とされていた「SHIFT事業」がフィルターにないことに気づきました。

JABのサイトだけを見ると、SHIFT事業は「65認定機関による検証を求めない制度」になったように思えますが、SHIFT事業のウェブサイトでは、検証機関は「ISO14065の認定又はISO14065の認定申請受理を要件」としているとあり、8団体が登録されています。

なので、申請段階の機関が3機関あるということなのでしょう。(ペリージョンソンは、認定を取り下げた後、再申請したのでしょうか)

SHIFT事業ウェブサイト(検証機関)より

JABとしてはSHIFT事業が「65認定機関による検証を求める制度」であることをあまり表に出したくない一方、環境省(SHIFT事業主管官庁)は、あくまでも「65認定機関による検証を求める制度」だと主張しているように思えるのは、私だけでしょうか?

これまで、SHIFT事業は、JIS Q 14064-1:2010(ISO 14064-1:2006)に準拠していました。ところが、JIS Q 14064-1:2023(ISO 14064-1:2018)には、準拠していないと思われます。

それは、2023年版では、GHGプロトコルで言うところの「スコープ3」を算定することを求めているからです。(「スコープ」はGHGプロトコルの用語で、カテゴリーもISOとそれとでは異なります)

JIS Q14064-1:2023より(著者追記)

SHIFT事業は、個社の直接・間接排出量のみであり、補助金が支給されるので「合理的保証」を要求します。間接的な排出量を含めてしまえば、「限定的保証」がせいぜい。制度の根幹に関わるものなので、「準拠」することはできなかったのでしょう。

環境省は「準拠しない」というスタンスに対して、JABはどうやら「だんまり」を決め込んでいるように思えます。あくまでも私の憶測ですが、SHIFT事業が65認定を不要となれば、需要が減るからではないかと考えています。

65認定だけでなく、その他の認定も、維持には費用がかかります。「依頼が無いのに維持していても無駄だから」といって維持しない審査機関はあります。審査員でも同じです。(私も、ISO50001 EnMSは流しました)

2023年版に準拠していない制度の検証を、65認定機関が認定することに何ら問題は無いのですが、何かこの当たりに、大人の事情があるのかな、と勘ぐってもしまいます。

今まで、かなり正確に準拠しており、「SHIFT事業のモニタリング報告ガイドライン」は図表を多数盛り込んで、理解しやすいものになっていたため、「JISではなく、こちらを参照して下さい」とご案内していたほど。

2023年版がリリースされてからも、「準拠していない」とは特段アナウンスはしていないように思えるので、お互い様と言ったところ?

いずれにせよ、受審準備に当たっては、非常に使いやすい報告書のフォーマット等を用意しているので、活用しない手はありません。

2010年版と2023年版の違いを認識して、有難く利用させて頂きましょう。


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