SBTi 今後の改定の方向は
前回は、SBTi参加企業数の変化や選択している目標について、ざっとお伝えしました。今回は、今後どのような方向で改訂がなされていくのか、私なりに考えたいと思います。
読み応えのある内容満載ですが、2点だけ。
1点目は、SBTiは、参加企業の急速な増加を概ね歓迎していますが、地域による偏りが大きい点を問題視していること。
このように、ラテンアメリカとアフリカからの参加が少ないのが現状です。
「先進国クラブ」とも呼ばれるOECDに加盟していない非OECD国は、世界の排出量の67%を占めるにもかかわらず、SBTi参加国のわずか15%。
そのために、SBTiは「the Country Activation Project」を2020年に開始し、21年には既に良い結果をもたらしたとのこと。今後スケールアップを予定しているようです。
対象地域に生産拠点を持つ企業は、このような支援の仕組みがあることを覚えておくとよいでしょうね。
2点目は、排出量が多く、かつ時価総額が大きい企業を「High-impact companies 」としてスクリーニングし、これらの企業が、20%を超えるように、SBTiのプログラムを「テーラーメード」していくとしている点です。
この「20%」は、SBTiが「Critical Mass」と呼んでいるもの。
つまり、母集団の中の20%が革新的な取組を実施すれば、残りのメンバーが急速に追随し始めるというものです。
「High-impact companies」はCDPとMSCI ACWI Indexを利用してスクリーニングしたとありますから、母集団はCDP回答企業でしょうね。
各地域における「High-impact companies」数と、SBTiコミット企業及び認定企業数は以下の通り。
アジアとアフリカが20%を下回っており、重点地域ということになります。業種別で見た場合がこちら。
幸いなことに、20%未達は、infrastructure と power generationdですが、SBTiとしては30%に未達の、7業種を重点対象としているようです。
どのような企業が含まれるかは分かりませんが、7業種に属する企業で、かつアジアとアフリカ、及び1点目で指摘されていたラテンアメリカを加えた3地域に工場を持つ場合は、支援を受ける代わりに、当該地域で達成するのは困難な程度の目標設定を強いられる可能性もあるのではないでしょうか。
なお、目標設定は、以下の2種類があります。
1.総量削減アプローチ(Absolute Contraction Approach)
2.セクター別アプローチ(SDA :Sectoral Decarbonization Approach)
5社に4社は1を選択していますが、2では原単位が基準となっていますので、1の総量が困難な場合はこちらを選択するのもよいでしょう。
ただ、現段階で利用できるのは5セクターのみですが。(7セクターは開発中)
SBTiは1.5℃目標と現状のギャップを埋めることを最重要課題にしています。
長期目標及びNet-Zero Standardの設定もその目的に合致したものです。
今回のレポートを読んで感じたのは、SBTi参加企業が指数関数的に増大し、SBTiだけでなく、CDPやTCFDなどその他のイニシアチブ、アライアンスに参加することがデファクトになりつつあるというビジネス環境を背景に、取組を深化させていくという、強い意志です。
2030年へ向けては、年率4.2%削減、2050年へ向けては、総量で90%削減。
もうやるしかない、と言うところまで来ていると認識すべきですね。
夏休みの宿題は初日から取りかかりましょう。