
GX-ETS制度設計始動(9)
GX-ETSの具体案に関して、有識者や産業界の意見を踏まえた検討を行うWGの内容をシリーズでお届けしています。
第1回会合は9月3日に開催され、7回に亘って概略を説明しました。
第2回会合も、既に、9月20日に行われてについいました。
遅ればせながら、8回目として引き続き概要を簡単にご案内しております。
今回は、その続きとなります。
ヒアリングを受けた業界団体は、次の5団体です。
2回目ですので、事務局説明は無く、業界団体の取組説明、委員のコメント及び両者の質疑応答で2時間強の会合でした。
・セメント協会(セメント協)
・日本製紙連合会(製紙連)
・日本自動車工業会(自工会)
・定期航空協会(定航協)
・ 日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)
1回目及び2回目における、業界団体の主張ポイントを再掲しておきます。
1回目
1.タイムフレーム
2.リーケージ
3.予見可能性
4.GXコスト負担
5.セクター毎の事情に配慮した設計
2回目
1.予見可能性
2.国内外各制度との整合性
3.過去の取組の評価
4.GXコスト負担
5.段階的導入
同じ表現でも、2回目における「予見可能性」は、「カーボンプライシング」に基づいたものであったことが、「制度設計」に基づいたものであった1回目とは異なっていた、というところまで前回お話ししました。その続きです。
ワーキンググループでは、委員はもちろんのこと、業界団体の代表の方々も「専門家」なので、前段の説明、条件等を省いて、議論されるので分かりにくいかと思います。なので、補足しながら説明したいと思います。
企業はそれぞれ事情が異なりますので、排出削減を行うに当たっての費用もそれぞれ異なります。現状からさらに追加的に削減するための費用を、「限界削減費用」と言ったりします。
最近話題に上がる「インターナル・カーボンプライス」は、このような費用や、各社の販売戦略等に基づいて決定される費用です。
また、「カーボンプライシング」は、「炭素税」「排出量取引」「クレジット取引」の総称です。この中で「炭素税」は「税」なので義務的な施策ですが、他の2つは義務的なものと自主的なものとがあります。

日本では、GX成長戦略で「成長志向型カーボンプライシングの導入」を決定しています。そのロードマップにおいて、「炭素に対する賦課金」という名称の「炭素税」及び「排出量取引制度」の導入が予定されています。

「排出量取引制度」は「GX-ETS」のことであり、現在は自主的参加となっていますが、「GX経済移行債」という「補助金」を受給するためには、参加を義務とすることが既定路線です。
なので、両者とも実質「義務的」となり、政府の方針(思惑)によって産業界が大きく影響を受けることになります。

2回目に出席した業界団体は、「カーボンプライシング」において示される「カーボンプライス」について「予見可能性」を担保して欲しいという要望を行った訳です。具体的には、何らかの指標を示して欲しいというもの。
もちろん、「成長志向型カーボンプライシング」は制度であり、1回目に出席した団体も同じ施策に着目して「予見可能性」を主張したのですが、この時のポイントは、「賦課金」や「有料オークション」で負担することになる「特定事業者負担金」でした。
つまり、「タイムフレーム」を考慮して「賦課金」「負担金」を安価に抑えて欲しいという、お願い・懇願だったように感じました。
政府が示す(誘導する)「カーボンプライス」が、自社で削減に取り組む場合の費用、企業としては自主的に削減するインセンティブが働きます。設定している場合は、インターナルカーボンプライスと比較する企業もあるかもしれません。

自主的に削減しようとした場合、エネルギーの効率的な使用や(ソフト対策)、高効率な機器への更新(ハード対策)等を考えるかと思いますが、ハード対策を行おうとすると、現時点では、普及品と比較して高価であることが多いですよね。プレミアム価格と言っても良いでしょう。
ですが、それを考慮しても、カーボンプライスよりも安価であれば、前述のように企業は購入して、削減に努める。そのような「GX製品」を販売している企業は、価格転嫁ができることになり、更なる研究開発が進むでしょう。
やがては、広く社会実装が進み、安価に入手が可能となるため、ひいては、日本全体での脱炭素が進むわけです。
まぁ、このように理想的な展開となるかは不明ですが、いずれにせよ「カーボンプライス」の見通しを示してくれれば、企業としても、2050年目標に向かってのパスを描くことができる。そのような主張だったと理解しました。
ということで、カーボンプライシングに着目した予見可能性について紹介してきましたが、ご理解頂けましたでしょうか。
「分かりにくいことを分かりやすく」をモットーとしている、このnote。
「まだまだ分からな〜い」であれば、お知らせ下さい。
次回は、2.以降のポイントをお知らせしたいと思います。
よろしくお願いします。

いいなと思ったら応援しよう!
