クレジット動向を勝手予測
かれこれ10数年、国内のカーボン・クレジットに携わっていますが、海外のカーボン・クレジットのダイナミックさには、目を見張ります。
そもそも、国内のクレジットは「半」コンクレ(コンプライアンス・クレジット)の、J-クレジット一択。ただ、方法論が限られ、使い勝手も悪い。
今後、GXリーグから超過排出枠も生み出されるでしょうが、活況を呈する状態となるかは???
完全なボラクレでは、例えば、フォレストック認証などもありますが、普及しているとはとても言えない状態。(応援したいですが)
なので、国内で作りたくとも思い通りにならず、かと言って海外ボラクレは、とてもお奨めはできないです。
加えて、極めつけは、価格の透明性と購入手段の欠如。
JPXやエネチェインさんのJCEXなどで取引できるようになっていますが、まだまだ相対取引が基本。
売り手と買い手の接点がなさ過ぎるのです。
他方、海外に目を向けると、コンクレ・ボラクレ、多数のマーケットが存在します。例えば、ACXは、シンガポールを拠点としており、完全にウェブベースで取引可能。ドバイのマーケットとも連携しています。
毎週、メルマガでこのようなマーケット情報を届けてくれます。
始めて海外ボラクレの価格を知ったときには、目を疑いました。
J-クレジットが「安い」と言っていたのが何だったのかと。
また、クレジットの種類やビンテージ(プロジェクト実施期間)によって、こんなに価格差があるのも驚きでしたが、考えてみれば当然ですよね。
株と同じで「人気投票」のようなものですから。
個人的には、「Carbon Credits」が提供しているチャートも利用しています。
こちらは、まさしく株式市場。
中国や韓国などは、政府による介入などの影響が見られますが、欧州(EUA)やアビエーション(CORSIA)などは、自由競争と言って良いかと。
このように、海外では、カーボン・クレジットが一つの金融商品として認知されていることを踏まえた上で、将来を夢想してみたいと思います。
皆さんもご承知の通り、クレジットはウォッシュ批判を浴びています。
加えて、ICVCMがCCP、VCMIがCoPをリリース。
CORSIAも、ボランタリーにオフセットを行う「1st Phase」が開始。
これらを受け、VerraやGSなどの代表的なスキームオーナーは、認証済みのクレジットのレビューや、既存方法論のアップデート、認証申請等に奔走。
クライテリアが格段に高くなるので、技術的に難しくなりますし、審査レベルが上がりますので、費用も高くなります。
このような背景の下、以前こちらのnoteをアップしておりますので、もしよろしければご参照ください。
では、今後どのように立ち居振る舞えばよいかと考えると、「オフセットではなくインセット」ではないでしょうか。
オフセットとは、自社のバリューチェーン外での削減回避量・吸収除去量をクレジット化、それを購入・移転することにより、排出量を控除すること。
インセットとは、自社のバリューチェーン内で、削減回避あるいは吸収除去行って、排出総量を削減することです。
これにより2050年、排出量をゼロにした状態が、IPCCが定義する「ネットゼロ」だからです。
ISO14068−1では、このように、「カーボンニュートラリティ」の達成方法をリスト化していますが、Noteに「d」と表示されているのが「ネットゼロ」と一般に定義されているとしています。
さらに「e」と表示されているのが「IPCC」による定義。
このように、定義が定まっていない「ネットゼロ」ですが、このリストの中で一番厳しいのがIPCCの定義であり、恐らく、これ以上の定義は無いと考えます。
であれば、できるできないは別にして、「IPCC」の定義における「ネットゼロ」を模索してみるのがよいと思うのです。
で「ムリ」となるかもしれません。その場合は、クレジットの活用も検討することになるでしょうが、その場合でも、使用するクレジットは「Removal」
実は、これに気づいた企業が、既に青田買いに走っています。
上記の表の「Early」はSBTiで言うところの「短期」、「Later」は「長期」だと思っていますが、その長期目標年である2050年を目前にして、それに気づくとどうなるか。
冒頭からご案内しているように、創生が難しくなったクレジット。その場面では、需給が逼迫し、価格が高騰しているかもしれません。調達しようにもできない。とはいえ、「ネットゼロ」は宣言してしまっている。ステークホルダーにどのように説明するか。
ということで、今後の動向を、勝手に予測してみましたが、いかがだったでしょうか。夏休みの宿題は、初日から計画を立て、愚直に推進していく方がやっぱり良さそうですね。
あくまでも憶測に過ぎませんので、最終判断はご自身でお願いしますね。
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