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素朴な疑問シリーズ〜上流と下流

私が算定を始めて間もない頃、「???」となったのがこの概念。
普通、「上と下」と言われれば、自分・自社を中心として「上と下」と思いますよね。水の流れと同じように、世界共通だと思っていました。

そんな意識で、スコープ3のカテゴリー「4」と「9」の説明を読んでいると「???」となったんですね。

物語でわかるサプライチェーン排出量算定(環境省)

上流にカテゴリー4があるのは分かりますが、下流にもあるじゃないですか。それで、説明を見てみると、こうなってます。

物語でわかるサプライチェーン排出量算定(環境省)

「費用を負担するかしないか」がキモなのか、と思って説明を探すと、こう書いてあります。

LCAなどでは、自社を中心にモノの流れで上流と下流を考えることが多いですが、スコープ3基準ではお金の流れで上流と下流を考えています。

物語でわかるサプライチェーン排出量算定(環境省)
物語でわかるサプライチェーン排出量算定(環境省)

それでも、納得したようなしないような、という感じでしたので、マニュアルを丁寧に読み込んで、ようやく、腹落ちしました。

企業のバリューチェーン(スコープ3)算定と報告の標準

運送事業者に自社製品の輸送を依頼した場合は、「輸送役務」を「購入」しているから「上流」になるんですね。そう、「購入」という言葉に縛られて、対価を支払うのは「形のあるプロダクト」に対してのみだと無意識に思い込んでいたから、合点がいかなかったんだと、ようやく気づきました。

さらに、スコープ1、2、3の定義が分かると、理解が深まります。

企業のバリューチェーン(スコープ3)算定と報告の標準

スコープ1は、「所有しているものから、使っているところで排出している排出量」のことを指します。これは分かりやすいですね。

スコープ2は、「購入したエネルギーを発生させるために、別のところで排出された排出量」です。このように表現すると分かりづらいですが、「エネルギーを発生させるために別のエネルギーを使っている」ということなので、2次エネエルギー、つまり、現状では殆ど、電力あるいは地域熱供給で供給される蒸気ですね。

ただ、エネルギーとして利用しようとしている、水素やアンモニアなども、製造にあたりエネルギーを使用しているという点では、2次エネルギー。とはいえ、じゃぁ、その一次エネルギーとして太陽光を使っていればどうなのか、原子力を使っていたらどうなるのか。

考えると複雑になりますが、深く入り込まず、現段階での算定に当たっては「電力または蒸気」という理解でOKでしょう。

それ以外がスコープ3です。

そのスコープ3は、冒頭で述べたように上流と下流に分けられます。
費用を支払う場合が「上流」でした。

企業のバリューチェーン(スコープ3)算定と報告の標準

ここまで理解できると、スコープ分け、カテゴリー分けで悩むことが少なくなります。

例えば、「廃棄物の処理」

自社の敷地内にある、自社所有のリサイクル施設で処理をした場合は、カテゴリー5「事業から出る廃棄物」でしょうか?

違いますよね。自社所有ですから費用を支払っていません。ですので、動力が化石燃料であれば「スコープ1」、電力であれば「スコープ2」となります。「廃棄物=カテゴリー5」と条件反射しないようにしましょう。

従業員が、前日、お客様のところへ営業車で赴き、直帰。翌日、その社用車で出勤してきました。この場合はどうでしょう。スコープ7「雇用者の通勤」でしょうか?

これまた違いますね。

社用車は従業員ではなく、会社の資産、所有物。そこから、直接排出される排出量ですから、ガソリン車であればスコープ1、EVであればスコープ2となります。

ここまで分かれば、出張も予想できるでしょう。

公共交通機関であればカテゴリー6、営業車で出かければスコープ1or2。
ホテルに泊まればカテゴリー6、会社の保養所に泊まればスコープ1or2。

カテゴリー8「リース資産(上流)」とカテゴリー13「リース資産(下流)」
はちょっと複雑です。

例えば、コピー機をリースしている場合、リース会社に「費用を負担している」ので上流「カテゴリー8」と言えますが、その使用に当たって消費している電力は、スコープ2として算出した方が楽ですよね。(というか、分けること自体無理でしょう)

逆に、自社がリース会社であれば、お客様における排出量は、「費用を負担してもらっている」ので下流「カテゴリー13」ですが、カテゴリー11「販売した製品の使用」とも言えませんか?

前回、ダブルカウントの話をしました。そもそもダブルカウントは、スコープ3に内在するものでした。

ですが、それは、異なる法主体間での話。自社内では避けなければなりません。といっても難しくはありません。重複しないように、割り振ればよいだけです。トータルでは変わりませんよね。

些末なことに拘るより、網羅性、正確性を追求する活動に注力しましょう。
とはいえ、気になったら止まらない。分かります、そのお気持ち。

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