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算定・目標設定・情報開示〜一歩前へ

GHGプロトコルの算定方法に基づいて「算定」を行い、SBTのガイドラインに基づいて「目標設定」を行い、CDPのようなプラットフォームを通じて、TCFD(ISSB)に基づいた「情報開示」を行う。

一昨年から今年にかけて、情報開示ルールの統合が進み、開示内容を評価するステークホルダーも増えたことも、この流れをサポートしています。

全て実施済の企業もあれば、途上の企業、検討中の企業など様々なフェーズにあると思いますが、この情報開示の流れは、逆流しないでしょう。

蛍光管がLEDに置き換わったように、銀塩カメラがデジタルカメラに、デジタルカメラでもデジタル一眼がミラーレスに置き換わったように、やるコストよりやらないリスク、あるいは、単純にやるコストがやらないコストを上回る、といった理由で、「やらない理由」が無い状態になっているのです。

ですが、残念ながら、算定の目的が開示に留まっているのが現状だと思います。これについても、noteで問題提起を行いました。

開示と同じステージで、削減目標まで設定し、SBT認定を受けている企業も増えてきていますし、ネットゼロ認定まで受けている企業が現れてきていることも事実。

毎月、SBT認定企業数のアップデートをお届けしていますが、着実に増加しており、SBT認定を受けた上でCDPのAリスト入りを狙う企業の存在も認識しています。

ただ、こちらも、「認定を受けたい」「A+を取りたい」という、「バッジ」取得が目的の企業が多いことも、削減支援をする中で実感しているところ。

このような背景の下に、世界の環境イニシアチブの間でホットイシューとなっているのが、「2050年ネットゼロ」達成を担保する「移行計画」です。

つまり「絵に描いた餅」では意味が無いわけで、ステークホルダーが「これだったら確実に削減できるな」「この情報を開示してくれたら、削減できているか確認できるな」と判断できる、削減計画の開示方法・内容を明らかにしましょう、というイニシアチブが現れました。それが「Transition Plan Taskforce」です。

TPT(Transition Plan Taskforce)は、イギリス政府の財務省が2022年10月に設立した、企業や金融機関の脱炭素化への移行計画(トランジションプラン)の開示基準を策定するためのタスクフォースです。

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)、グラスゴー金融同盟(GFANZ)、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)、世界銀行など、世界各国の政府、金融機関、企業、NGOなどから構成されています。

TPTの目的は、企業や金融機関の脱炭素化への移行計画を、透明性、比較可能性、信頼性を確保した形で開示するための基準を策定することにより、企業の移行を促進し、持続可能な経済への移行を実現することです。

TPTは、「移行計画の開示基準の策定」「基準の普及・啓発」「基準の実施状況のモニタリング」といった活動をしており、先月10月には、開示フレームワークをリリースしました。

このフレームワークは、企業や金融機関の移行計画の開示に必要な、以下の5つの主要項目を定めています。

・野心:移行の目標とロードマップ
・行動:具体的な行動計画
・説明責任:開示の透明性と信頼性
・情報の質:情報の質と一貫性
・データと分析:データと分析の使用

これを開示することで、企業がネットゼロ目標に至る経路のどこに位置しているのか(「on thr track」なのか「off the track」なのか)が明らかになります。

機関投資家であれば投資判断に利用できますし、対象企業が自社のバリューチェーンに含まれる企業だったり、金融機関にとっての「Financed emissions」であれば、どのような「エンゲージメント」をすべきかの判断材料にもできるでしょう。

TPTは、企業や金融機関の脱炭素化への移行を促進し、持続可能な経済への移行を実現する上で重要な役割を果たすものと期待されているのです。

このmissionを認識しているのでしょうか。
TPTは矢継ぎ早に、企業による導入を促進する施策を推進しています。

まずは、TCFD、IFRS S2及びESRSとの、開示項目の比較資料。
対応表となっており、いずれかの開示を行っていれば、スムーズに移行できるように配慮されています。

つづいては、セクター別のガイダンス。
現在はドラフト版で、12月29日までコンサルテーション中です。

公開されているのは、以下の7セクターですが、SBTiのSDAでは依然として「In Development」の「Oil & Gas」が入っているのが目につきます。

金融セクターが一括りにされていないのも、金融の役割を重要視しているが故でしょう。

Asset Managers
Asset Owners
Banks
Electric Utilities & Power Generators
Food & Beverage
Metals & Mining
Oil & Gas

EFRAGはESRSの導入支援に当たって、Q&A Platformを用意しています。

開示ではありませんが、CBAMについては、ガイダンスや説明動画がポータルに集約されており、使い勝手が非常に良いです。

このように、学ぶ材料は揃ってきています。
「やらない理由」はもうありません。

繰り返しになりますが、「やらない理由」を探すのではなく、「いつやるか」の段階に来ています。

「Running by learning」
まずは着手して、スキルアップしていきましょう。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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