GX-ETS制度設計始動(6)
9月3日に開催された「GX実現に向けたカーボンプライシング専門WG」第1回会合シリーズも6回目になってしまいました。こんなに長引いて、申し訳ありません。
YouTubeのアーカイブはこちらです。
5回目からは、業界団体の現状の取組の説明をお届けしています。
ヒアリングを受けた団体は、次の4団体と、環境NGO 1団体。
4つの業界団体の主張は、主に次の5点でした。
前回は、「1.タイムフレーム」「2.リーケージ」「5.セクター毎の事情に配慮した設計」について説明しましたので、今回は、「3.予見可能性」「4.GXコスト負担」を紹介していきます。
「3.予見可能性」については、事務局も論点の一つとして挙げており、「1.タイムフレーム」同様、官民の共通認識であることが分かります。
特に電事連は、「投資回収予見性」にまつわる様々な課題、論点を展開しており、その意気込みをひしひしと感じました。
日本のNDCは「2030年に2013年度比46%減」だったところ、23年4月に札幌で開催された、気候・エネルギー・環境相会合で「35年にGHG排出を19年比で60%削減」が共同声明に盛り込まれたことから、「35年に2013年度比66%削減」に変更されることが既定路線となっています。
(19年比を13年比にすると66%に相当します。期限が30年から35年へ伸びるとはいえ、比率は46%から20%も上積みされるのです)
今年から25年にかけて行われる、第7次エネルギー基本計画の策定作業も、これが基本になることは確実です。その中核が、電力の脱炭素化。
ただでさえ、無理難題なところ、「S+3E」も達成しなければならない。
難しいパズルに挑んでいる電力セクターの、悲痛な叫びに思えました。
下図をご覧下さい。
鉄鋼・石油・化学セクターは、いずれも重厚長大ではありますが、そのプラント建設のリードタイムは、発電所建設のリードタイムの比ではありません。ともかく、着工に至るまでの道のりが、遙かに長いのです。
原発の問題も抱えながら、将来的に再エネ100%電力供給義務が課されるのであれば、投資判断するに当たって、不確定要素は極力排除してもらいたいというのは、至極当然の要求だと思います。
そして電事連の「One more thing」「Last but not least」
「特定事業者負担金」です。
2033年度から発電事業者に対して、有償で排出枠を割り当てることにしていますが、この購入費用が「特定事業者負担金」であり、GX経済移行債の支払い原資となるのです。
この負担金と、2028年度から導入が予定されている「炭素賦課金」は、市場メカニズムで価格が変動するETSの排出枠とは異なり、政府のさじ加減で決まります。「政策の失敗」とならないよう、WGの委員の皆さんに、しっかりと舵取りをしてもらいたいですね。
続いて、最後の「4.GXコスト負担」
一言で言うと、「価格転嫁が適切に行えるようにして欲しい」ということ。
グリーンスチールやSAF、アンモニア、H₂、再生樹脂、CO₂吸収コンクリート、再エネ100%電力などなど、上流セクターは様々な研究開発を行い、脱炭素化に資する製品を上市しています。
現在は当然ながら、高コスト。にもかかわらず、中々価格転嫁できないのが悩ましい問題なのです。ユーザーからすると、例えば、既存の鋼板をグリーンスチールに変更するだけで、努力することなく自社製品の排出量を削減することができます。フリーライドと言って良いかもしれません。
価格転嫁できなければ、メーカーは市場に供給し続けることができません。マーケットが拡がらなければ、そのような製品・サービスの価格は高止まりし、さらに普及が遅れるでしょう。
「GXコストをバリューチェーン全体で公平に負担するシステムを構築して欲しい」本日ヒアリングを受けた、4業界団体全体の切なる訴えでした。
ということで、事務局のカーボンプライシング動向報告及び論点紹介、業界団体の現状取組の説明についてご案内してきました。
次回は、委員の方々のコメントを紹介しようと思います。
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