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CCPと6条4項メカニズムにおける追加性

昨年のCOP29に先立ち、パリ協定締約国会合(CMA)からの要請に基づき、SBM(監督機関会合)が、第6条第4項に基づく方法論や吸収除去活動の要件についての基準を作成・採択。COP29初日に正式に承認されたことは、ご承知の方も多いことでしょう。

これにより、パリ協定6条4項メカニズム(PACM : Parisi Agreement Crediting Mechanism)における、方法論の作り方が定まり、そのルールに従って作られた、炭素除去によるクレジット創生の方法論が明らかになりました。

その方法論に記載された「Definitions」により、「高品質な炭素除去クレジット(Removal Credit)はどのような要件を備えておかなければならないのか」が分かったので、クレジットスキームオーナーはこれに併せて、既存の方法論の改訂を行うものと考えます。

A6.4-STAN-METH-002より(著者追記)

私としては、方法論を作るためのルールとして最も参照されていると思われる、ICVCMのCCPs(Core Carbon Principles)が、どのような改訂を行ってくるか。つまり「A6.4-STAN-METH-001」にどのように適合させてくるかに興味があります。

その中でも、最も重要なのが「Adittionality(追加性)」でしょう。
なので、簡単に、相違点と共通点をみていきたいと思います。

まず定義について。

CCPsは、民間イニシアチブなので、市場における「追加性」重視。
一般に言われるように、追加的な投資が行われるのか。
クレジット収益あったからこそ、そのプロジェクトが行われたのかです。
インセンティブになったのかということですね。

他方、6条4項メカニズム(PACM)は、当該プロジェクトがBAU(Business as Usual)よりも排出量が少ないこと。あるいは、法域が指定する排出量よりも少ないことが要件。あくまでも、プロジェクトが行われたことにより、排出量削減につながっていることです。

続いて、評価方法。

CCPsの方は、投資回収年数に代表されるような投資分析が主体。それに加え、市場浸透率や参入障壁などの市場慣行も考慮します。

PACMは、あくまでも「排出量削減」というパフォーマンス重視で、BAUを超える削減達成を具体的に示す必要があります。もちろん、法的要件や現地条件、過去の実績も考慮されますが、CCPsの方が柔軟性が高いと言えるでしょう。

このように、評価アプローチは様々ですが、実際、要求されている事項が担保されているのかを証明することは、非常に難しいと思います。

まずもって、ベースラインの妥当性の判断が困難。(これはいつまでもついて回りますが)

また、必ずしも全ての評価手法について国際的合意が得られているとは限りません。プロジェクトがホスト国の政策や長期的な排出削減戦略に一致していることを具体的に示すことも容易ではないかと。

とはいえ、両者とも、世界全体での排出削減に向かって「環境十全性」が担保されたクレジットを供給するという目的は一致していると考えます。

ウォッシュ批判が吹き荒れている昨今。また、バリューチェーン外の削減でバリューチェーン内の排出量を控除することに対する反対意見が多いことも承知しています。

ですが、「追加性を備えた高品質なクレジット」であれば、「世界全体の排出削減」に貢献することは確実。BVCMは批判されることも多いかと思いますが、国境が無ければ「バウンダリー」が無いのですから、クレジット購入による削減も「バリューチェーン内」になります。

もちろん、自助努力による削減ファーストではありますが、2050年ネットゼロを目指すのであれば、BVCMも重要な手段。排出削減という「貢献」のあり方が変わってきていると言えるでしょう。

ということで、デジュールのルールブックが公開されたのを受け、デファクトのルールがどうなるのか、想いを馳せて見ました。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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