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Verraの「Scope3 Standard Program」に期待(1)

6月25日にCDPとBCGが合同で発表した、23年のCDP質問書回答を分析した新しいレポート「Scope3 Upstream: Big Challenges, Simple Remedies」は、スコープ3排出量の全産業の平均値は、スコープ1・2排出量の26倍だっ
たったことを明らかにしました。

とりわけ、製造、小売、材料部門からの上流排出量は、22年にEUで排出されたCO₂の1.4倍に上ったそうです。

他にも、例えば、自動車セクターは、下流排出量が自社のバリューチェーン排出量の70〜80%を占めること、金融セクターは、スコープ3排出量が9割以上であることなどは、皆さんも十分ご承知でしょう。

とはいえ、“You can’t manage what you can’t measure.”

スコープ1・2排出量については算定できる環境が整いつつある一方で、スコープ3については、グローバル企業においても緒に就いたばかり。各国版のIFRS S1・S2策定が進む中でも、先行き不透明なのは、算定ルールが明確でないためだと思います。

なので、CDPが、回答企業に対し、サプライヤーへのエンゲージメントを高める施策を推進したり、はたまた、投資家がCDPと協働して、投資先に対し、ノン・ディスクロージャー・キャンペーンを実施しても、特効薬とはならない訳です。

算定のデファクトスタンダードであるGHGプロトコルは、現在、現ルール策定以来の科学的進展や社会的変遷を受け、各スタンダード及びガイダンスのアップデートに着手しており、2025年に草案がリリース、2026年後半にファイナライズされる予定ではあります。

ISOも、昨年のISO14068-1 2023(カーボンニュートラリティ)のリリースに引き続き、ISO14060(ネットゼロを目指す企業)の策定が進行中です。

ISO32212(金融セクターのネットゼロへの計画)という規格作りも進んでいますので、算定周りではこの数年でかなり整備されることにはなりそうです。

ですが、これらはあくまでも、フレームワークに過ぎません。

GHGプロトコルもISOも、一定の手順、方法は示してくれますが、算定対象となる排出活動や、排出係数を与えてくれる訳ではありません。自社で排出活動を特定し、自社で適切な排出係数を選択する必要があるのです。

算定に当たっては、ISO14064-1に、次のような原則が示されています。

1. 適切性(Relevance)
意図した利用者のニーズに適した GHG の排出源,GHG の吸収源,GHG 貯蔵庫,データ及び方法を選択する。
2. 完全性(Completeness)
全ての関連する GHG の排出量及び吸収量を含める。
3. 一貫性(Consistency)
GHG 関連情報について,有意義な比較を可能にする。
4. 精確さ(Accuracy)
実行可能な限り,バイアス及び不確かさを減らす。
5.透明性(Transparency)
意図した利用者が合理的な確信をもって判断を下せるように,十分かつ適切な GHG 関連情報を開示す る。

JIS Q14064-1 :2023 より

SHK制度は、温対法という法律に基づいていますので、算定に使用するデータは全て公表されているため、マニュアルに従ってさえいれば、上記5原則は全て網羅できます。

振り返って、スコープ3を鑑みると、GHGプロトコルやISOの取組が進展しても、この領域に達するのはかなり難しいでしょう。

この現実を知らない人たちが、スコープ3まで含めたGHG排出量の報告に当たって、「合理的保証」を要求するルールづくりを進めようとしていることに対しては、正直ネガティブウォッチです。

このような、組織のスコープ3排出量算定の困難さに対して、プロジェクト排出量算定のスペシャリスト、三大ボラクレの一つであるVerraが、「Scope 3 Standard Program」というプログラムを推進しています。

2022年5月、VerraはScope 3の排出量削減における課題とギャップを特定し、企業がScope 3排出量を効果的に計算し報告するためのプログラムを設計することを目的として、「Scope 3 Initiative」を設立していました。

これが発展したものが、「Scope 3 Standard Program」です。

このVerraのプロジェクトが、スコープ3排出量算定にどのように貢献できるのか。次回、見ていきたいと思います。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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