お客様との約束を果たそう
SBTiによるスコープ3削減に当たってクレジットの利用を認める旨の声明を受けて頂いた質問は、主に2つあります。
「何の話?」と思われた方は、まず、こちらご覧下さい。
1つは、「何故今頃?」「何のために?」というそもそも論です。
これについては、私なりの見解をお届けしました。
もう1つは、「SBTiをやる意味があるのか」というもの。
この声明を受けて、「脱炭素の旗振り役が、その手を緩めるのか」のような批判や、それこそ、内部からのクーデター(?)もあったりと、端から見ると、内部崩壊し始めているように見えるからかもしれません。
まぁ、Luizさんは、2022年のSBTiの組織改革の中で外部から招聘されたCEOですから、ステークホルダーの意見を無視することもできず、クレジット利用の緩和に踏み込んだ可能性もありますが、プロパーからしてみれば、組織に対する反逆と映ったのかもですね。(個人の意見ですのでご承知おきを)
ただ、声明発表後の混乱や、批判に晒されているSBTiを見ていると、「この先いつまで「デファクト」の地位を維持できるか?」という疑問がわき、Net-Zero 達成の厳しさと相俟って、「SBTi認定を目指さなくてもよいのでは」となったのではと推測しています。(繰り返しますが、私の意見です)
私は、算定方法のデファクトがGHGプロトコル、目標設定のデファクトがSBTi、開示内容のデファクトがISSB、開示方法のプラットフォームはCDPとご案内してきました。
ISSBについては、SSBJによる日本版S1・S2のように、各法域で具体的な基準作りが進むなど、さらに「デファクト化」が進んでいるように見える反面、これにより、任意開示が法定開示と移行するのであれば、CDPの地位もいつまで続くかと思っているところではあります。
この声明を端緒として「必ずしもSBTiじゃなくてもよいよね」と考えたとしても、不思議ではありません。
ですが、ここで皆さんに「法目的的」に考えてほしいと思います。
「脱炭素化を進め、2050年Net-Zeroを達成すること」が目的ではないはずです。不確かではあり、反対意見も多数あるでしょうが、達成したその先には、地球環境が持続可能な状態になっている可能性が高い。そのような「地球」を実現するためではないでしょうか。
認定を受けた企業も、認定を目指している企業も、その「あるべき姿」実現のために、目標を設定し、達成計画を立案していることでしょう。
その目標や計画は、SBTiの申請だけでなく、ウェブサイトや統合報告書、株主総会資料、プレスリリースなどなど、様々な媒体で公表していませんか?
それは、「お客様との約束」であって、「SBTiへのコミットメント」ではないはずです。SBTiがルールを甘くしたからといって、自社も甘くすれば、「お客様との約束」を反故にしていることになりませんか?
選挙公約を簡単に反故にする政治家もいますが、同じことをしていれば、お客様の信頼は、あっという間に崩れてしまうでしょう。築くのは難しい一方、失うときは一瞬ですから。
色々と申し上げましたが、SBTiやCDPの地位は、まだまだ強固だと思います。今現在「蔑ろにしていい」とは、とても言えません。ですが、スタンダードセッターの動きに、一喜一憂するのは得策ではありません。
毎年開催される、気候変動枠組条約締約国会議(COP)の結果次第で朝令暮改となることもありますし、米国や欧州の動向にも左右されます。グローバルサウスもキープレーヤーとなってきました。
ですので「お客様との約束」を愚直に実行していくことを強く推奨します。
「on track」なのか「off track」なのか、はたまた「ahead of schedule」なのか、常に現状を確認し、必要であれば修正を行います。お客様とコミュニケーションできていれば、必ずしもマイナス要素とはならないはずです。
ということで、「SBTiをやる意味があるのか」というクエスチョンに、自分なりの見解を示してみましたが、いかがだったでしょうか。
回答は一つではありません。
是非、皆さんのご意見もお聞かせください。
強制されるのではなく、自らの意思で、未来を切り拓いていきましょう。