審査?検証?どうちがうの?
審査(Audit)と検証(Verification)に違いを認識して使い分けている人は、どれくらいいるのでしょうか。ISOの方が歴史がないため「審査」の方が馴染みがあり、GHG排出量においても、同じように使っている人が大半だと思います。
質問されることも多くなってきましたので、簡単に説明しておきますね。
最初に、ISOは「審査」であり、GHG排出量は「検証」と称呼することを抑えておいて下さい。
区別・整理の仕方は様々ですが、個人的には以下のように考えています。
ちがい その1「目的」
ちがい その2「プロセス」
ちがい その3「理由及び背景」
異なるご意見もあろうかと思いますが、テクニカルには区別していますので、社内では「算定のプロフェッショナル」とされているサス担の方には、知っておいてもらいたい内容です。
審査と検証の違いを説明したところで、類似性もご案内しておきましょう。
ISOの認定に当たっては、下記のようなアクターがいます。
下記ステップを踏むことにより、ある国の認定機関が認定した審査機関の認証は、他の国々でも認められるようになります。
この相互認証システムにより、ISO認証は国際的に一貫した基準と信頼性を持つことが保証されます。つまり、IAFのメンバーである日本のJAB(日本適合性認定協会)の認定を受けた審査機関から審査を受けて認証された企業は、世界においても主張できるという訳です。
ISOは企業にとって、事業活動上重要なシステムのため、国内外で認証能力が必要であり、認定機関から認定を受けた審査機関による認証を取得せざるを得ませんが、GHG排出量においては、まだそのレベルではありません。
もちろん、これから、ISSBのIFRS S1・S2のような開示ルールが各国で義務化され、各国版のS1・S2にて、検証が義務化されると共に、検証機関の指定も行われるようになれば別ですが、まだ先のことでしょう。
なので、国内でサービスを提供している「検証機関」は、ISO系と会計士系の2タイプが複数存在しています。(企業の排出量算定の開示で「第三者検証済み」などと記載されているかと思います)
機関の善し悪しは、これまでの実績を元に企業が判断せざるを得ませんが、受審する側としては、ISOのような明らかな指標が欲しいですよね。
そのような要望に対して、JABが、妥当性確認・検証を行う機関の能力を、国際規格「ISO14065」に基づき審査し、認定しています。「ISO14065」とは、検証機関に対する要求事項をまとめたものです。ISOと同じような仕組みです。
通称「65認定機関」と言いますが、残念ながら、まだ6機関しかありません。それでいて需要の高まりもあり、引く手数多。依頼しても、なかなか要望通りのスケジュールで実施できてもらえるとは、限らないようです。
現在のところ、国内で「65認定機関による検証」を要求しているのは、環境省が実施している「SHIFT事業」のみだと思います。排出量の削減をコミットして補助金を受給、未達の場合には取引を行うというものです。
こちらは「合理的保障」まで求めるもので、ハイレベルなものですが、お金をもらいながら、第三者検証による、有効化審査・実績確認をしてもらえるので、算定及び受審のよい練習になります。お奨めです。
ということで、審査と検証について説明してきました。
分かっていなくてもよいですが、分かっていた方が、今後業務を進める上で有用な情報だったと思います。
これからも、皆さんの役に立つ情報を、ベーシックなものから、ハイレベル、さらに、ホットなものも織り交ぜて紹介していきます。
ご期待下さい。