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ブルーカーボンのおさらい(3)

皆さんの関心が高まってきたことを受けて、改めてブルーカーボンについて、簡単なおさらいをしております。

1回目は、ブルーカーボンの定義についてお話ししました。

2回目は、ブルーカーボンを取り巻く情勢について。

3回目の今回は、ブルーカーボンの登録・認証スキームである「Jブルークレジット」についてご案内していきます。

Jブルークレジット」とは、パリ協定の発効に伴い、いわゆるブルーカーボン生態系のCO2吸収源としての役割その他の沿岸域・海洋における気候変動緩和と気候変動適応へ向けた取組みを加速すべく、JBE(Japan Blue Economy Association)が、新たなカーボンクレジットとして創設した制度です。

私自身、JBEの母体となっているBERG(ジャパンブルーエコノミー推進研究会 )に属しており、JBEの桑江理事長とJブルークレジット創生に奔走している立場であり、noteでも何度もご案内してきました。詳しくはこちらをどうぞ。

制度は2020年度から始まっており、今年(2023年度)で4年目。
認証申請の手引きも充実し、今年の8月からはオンライン化されました。

認証実績も順調に増加し、2021年度から2022年度にかけては、認証数及び認証量も大幅な伸びを見せました。(まあ、認証量には大型案件が寄与しましたが)

プロジェクトの実施場所については、西日本に偏っています。また、実施者については、漁協や自治体、企業や大学等が協議会を作って申請する場合が多いです。グリーンカーボンと比較してブルーカーボンは、漁業権等の絡みがあり、権利関係を適切にマネジメントしようとすると、この形態に落ち着くようです。

JBE桑江理事長資料より

プロジェクトのタイプについては、基本的に、藻場の再生と養殖です。
(各プロジェクトで両者を含んでいるため、数は一致していません)

奄美大島でブルーカーボンの取り組みが行われていますが、まだ、申請・認証には至っておりません。

世界を見渡すと、この状態は、極めて特殊であることが分かります。

JBE桑江理事長資料より

このように、グローバルでは、マングローブのプロジェクトが主流であり、藻場再生や養殖でブルーカーボンを創生しているのは、ほぼ日本のみで、その他の代表例は、米国チェサピーク湾における、アマモ再生プロジェクトくらいです。

なので、JBE桑江理事長としては、日本オリジナルの「藻場再生・養殖」によるブルーカーボンの方法論を確立し、世界標準としたい意向。そのためには、様々な地域、事業者によってブルーを生み出し、精度を向上させていく必要があります。

このような背景の下、現在、各所で研究プロジェクトが立ち上がっており、先日も、ENEOSが、東大、産総研、港湾研と共同で、大規模創出に向けた検討を開始した旨のプレスリリースがありました。

ENEOSプレスリリース

100万トン超の創出を目指すというのですから相当な規模ですが、こちらはまだ先の話。とはいえ、令和5年度は北海道からワカメの養殖によるブルーカーボンが確実視されていますし、北電や、北大・SONYなども着手済み。

今後、大量のブルーカーボンが市場に出てくることが見込まれます。

JBE桑江理事長資料より

先ほど、2021年度から2022年度にかけては、認証数及び認証量が大幅に伸びたと書きましたが、それでも、需要の方がはるかに多く、トン当たり7万円超のプライスがついています。

ですが、これからは分かりません。
供給過多に陥れば、J-クレジットや海外のボランタリークレジットと同じく、買いたたかれる時代がやって来るかもしれません。

そのときに、正当なプライスで取引されるためには、「何故このクレジットを買わないといけないのか」という理由、ストーリーが必要です。

このストーリーが訴求できなくて、グリーンカーボンを作ったものの販売できず、収益が上がらないから次回の認証費用が賄えず、1年限りで止めていった自治体が何と多かったことか。

Jブルークレジットとして認証されるためには「コベネフィット」が必要です。藻場を再生したり養殖したりすることによって、その事業が直接生み出す利益に加えて、どのような、ベネフィットを地域社会、環境に与えることができるか。ストーリーそのものが無ければ、登録にも至りません。

J-クレジットの前身である国内クレジットは、当初、売り手(作り手)である中小企業と買い手である大企業が、共同で計画書を作り、登録申請するルールでした。つまり、買い手が決まっていました。

ですが、制度の普及を図るべく、作り手だけでも申請できるように変更した結果、クレジットは生まれたものの買い手不在の状態に陥りました。

大企業が購入する理由は、経団連の環境自主行動計画に基づいて策定された業界団体毎の削減目標達成のためでしたが、自前で十分目標を達成していたので、買う理由もなかったのです。

Jブルークレジットは、コベネフィットを要求するという形で、J-クレジットと同じ轍を踏まないように設計されています。

Jブルークレジットエバンジェリストとして、大企業でなく地元企業と地域住民の協業でブルーカーボンを創生し、地域・環境・経済に対するベネフィットを生み出すプロジェクトの推進に努めたいと思っています。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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