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森林系クレジットの復権なるか?

日本の森林吸収系のクレジットは、J-クレジットの森林系クレジットが代表例です。(J-VERからの移行したものと、J-クレジットとして最初から登録されたものの両者が混在しています)

その他、フォレストック協会が運営するフォレストック認証があります。

J-クレジットと異なり、温対法の調整後排出量報告には利用できません。
完全な民間ベースのボランタリーな森林吸収クレジットです。
(VCSやGSもその意味では同じですが)

2009年、国内におけるクレジット制度が開設された当初は、J-クレジット(森林系以外)あるいは国内クレジットよりも、J-VER及びJ-クレジットの森林系クレジットは人気が高く、創出側の言い値で販売できていました。

しかしながら、RE100やSBTi、CDPといった国際的イニシアチブが普及し、グローバル企業が価値を見出し始めると、それらに活用できる、J-クレジットの再エネ系クレジットの需要が増大し、価格が上昇しているのは皆さんもご承知かと思います。(以前ご紹介しましたね)

活用できるという文脈では、非化石証書も同様です。こちらも紹介済です。

そもそも、削減系や再エネ系と比較して創出するハードルが非常に高いところ、このような需要動向の変化が加わったため、事業者の意欲が低下しているというのが、現状です。

運営委員会も認識しており、森林小委員会を設置して議論を始めました。

第25回運営委員会

議論されている論点は、

1.プロジェクト認証対象期間と林業経営のステージのアンマッチ
→対象期間8年に対し植林から主伐まで5〜60年
2.クレジット売却益が上がる年以外は収入ゼロ
→毎年経費のみがかかる
3.木製製品の炭素固定クレジットについて
→永続性評価の期間、クレジット付与対象

1は、海外の事例も参考に、8年から16年へ変更することで合意
3は、テクニカルな問題のため、小委で決定すればよいこと。

なので、個人的には2の課題克服がキモだと考えます。

小委では、ソリューションとして、大きく分けて2案提示しています。

1.「造林及び初期保育が適切に⾏われた森林が成林する⾼い蓋然性がある」として、対象期間内でも算定を行って複数回のクレジット発行を行う
2.第三者が代わりに再造林を⾏う場合を想定したスキームとして新たな⽅法論「再造林活動方法論」を策定する

1は、クレジットの前倒しです。
「ファクトに基づく認証を⾏ってクレジットを発⾏すべきであり、仮定に基づいて認証することはクレジットの 信頼性が問われる」は正鵠を射ているが、べき論だけは進まないのも事実。

この事情は、昨日紹介した「Lighthouses」同じですよね。
資本がない事業体でも、第三者認証のようなものが得られれば、「現物」がない段階でも収入を得ることができる。

「クレジットを発行する」とするから問題なのであって、「出来高払い」「出世払い」であれば異論は出ないのではないのでしょうか。

クラウドファンディングで、サポータを募集するイメージでしょうか。
いわゆる「新株予約権」を購入した支援企業は、その過程をストーリーとして自社の環境ブランディングに活用しても良いわけです。

2は、事業体を完全に分ける案ですね。
森林の所有者は資本力がないことが一般的なところ、大企業などに、その森の将来を託すもの。これについては、要件を明確にすれば、手を挙げる企業は多いのでは?「企業の森」よりも、よっぽど訴求力はあると思います。

森林系を始めとする吸収クレジットは、SBTiのNet-Zero Standardでも認められると見込まれます。需要はこれから高まるず。

官僚の皆さん、「do-able」な仕組みづくりをお願いしますね。





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園田隆克@GHG削減サポーター
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