SBTiに対する挑戦状
UNFCCC主導で始まった「Race to Zero Campaign」
noteでもご案内済です。
そのキャンペーンの中でも、SBTiが2050年ネットゼロを目指して策定した「Net-Zero Standards」は、その中核とも言えるでしょう。
12月6日現在、ネットゼロ目標を提出している企業は世界で1957社、認証済はそのうちの129社。日本企業は、目標提出は62社で、認証済は7社です。
SBTiの目標提出企業については、毎月報告しています。
最近のアップデートはこちら。(先月現在なので少し少ないです)
短期SBT目標の認証済企業が世界で2376社であることを考慮すると、ネットゼロ達成が、どれくらい難しいかが分かるかと思います。
それくらい、「Net-Zero Standards」が厳しい内容であると言えますが、それがまだまだ不十分であると考える企業グループ(Carbon Plan and its partners)から、Public Consultation Letter来た模様。
簡単に言うと、2050年までは一生懸命削減し、2050年段階で削減できなくて残っている排出量(残余排出量)については、その時点で「中和」するというのでは、遅すぎる。もっと早い段階から、「除去」すべきと言うこと。
これについては、私も、全く同感です。
ただ、提言の中で明確に「吸収」を否定しているのが気になりますが。
さて、除去することによって生まれるクレジットを購入することにより、除去プロジェクト実施者は収益が上がるため、事業を継続することができます。それはすなわち、世界全体の排出量の純粋な削減につながります。
その収益により除去技術を発展させることもできる訳です。
何も、2050年まで待つ必要は無いのです。
ですが、UNFCCCのキャンペーンの定義に従うと、2050年より以前にクレジットを使用することはまかり成らん、となってしまいます。クレジットを購入する企業は現れません。収益が上がらない事業を手がける事業者が出てくる訳がありません。
ということで、基本的にウェルカムですが、LetterにおいてSBTiへ突きつけている要求事項は厳しいです。
まず、「恒久的な炭素除去技術」ですが、炭素貯留期間が1000年以上であることとしています。これは、「化石由来のCO2排出を中和するために使用される場合、大気中のGHG濃度と同等の期間、貯蔵の永続性を確保するべきである」という考えに基づくもの。
まぁ、確かにその通りです。ですがハードルは非常に高い。だからこそ、ネットゼロを目指す企業に対して「継続的に投資する」ことを求めるという。なので、そのようなクレジットの価格は、必然的に高くならざるを得ません。果たして、ついて行ける企業はいるのでしょうか。
レターでは、このような、希望的観測が述べられています。
これに対する、SBTiの回答を見てみましょう。
温暖化を1.5℃に抑えるためには、徹底的かつ緊急に脱炭素化を進めることが重要であると共に、排出削減に限界がある以上、その影響を相殺するために、長期的には恒久的な炭素の除去も必要。
この点については、両者争うことはありません。
ただ、Net-Zero Standrdsを始め、Race to Zero Campaignも、先に紹介したISOの「Net Zero Guidelines」も、「除去の前に削減ありき」というのを明確にしたいが故に、早急なクレジット使用を排除している点が、相違しているのです。
ただ、提言の中でも、十二分に「削減が優先」であることは主張されています。それを踏まえた上で、除去技術の開発に継続的な投資がなされないと、50年までの期間を無駄に過ごしてしまう、という問題意識が働いているがゆえの提言だと考えます。
2023年のバージョン2を、楽しみに待ちましょう。