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海洋ごみの罪罪

西表島に漂着する海洋ごみについて、先般ご案内しました。
その量のインパクトたるや、想像を絶するものでした。

漂着している海洋ごみの状況

海洋ごみの回収に当たっては、全国各地で非定時では実施されていると認識しており、もちろん、西表においても、ボランタリーベースの回収はなされています。

バナナハウスの森本さんが、ブログにアップされていますので、是非ご覧下さい。

とはいえ、本来はボランティに頼らずに、「国や自治体が予算化し、事業として実施すべきだ」などと、素人の勝手判断をしていました。端的に言うと、「お金をかけて回収すれば良い」と思っていたのでした。

そんな浅はかな認識、考えは、今回視察したことで完全に瓦解しました。
圧倒的な量を目の当たりすれば「対処療法など意味が無い」ことに気づかぬはずは無いと思います。

いかにして「流出させない」ようにするかを考える時、すぐに思いつくのが「どこから流出しているか」だと思います。漂着ごみの調査については、継続的に実施しており、中環審(環境省)や産構審(経産省)で定期的に報告されています。

海洋ごみは「プラスチック製品が多い」ということは、ほぼ間違いは無いようです。ですが、「中国製品が多い」ということは、全体を捉えた上で正しく認識しておく必要があります。

確かに、一般に広く流布されている調査結果は回収場所や回収対象が特定されていなかったり、対象が明示されていなかったりすることが多いからです。(気づいていないこともあるでしょう)

第32回 循環型社会部会 資料3 海洋プラスチック問題について より

ペットボトルを代表例としている資料を見れば、確かに「中国製(台湾を含む)」が主流のように見えますが、日本列島に近づくにつれ割合は低下し、韓国の割合が増加します。太平洋側に至っては、ほぼ国内から流出したごみとなっています。

平成26年度沖合海域における漂流・海底ごみ実態把握調査報告書(環境省)を見ると、回収されたプラゴミの種類によっては、異なる傾向があることも分かります。

平成26年度沖合海域における漂流・海底ごみ実態把握調査報告書(環境省)より

ペットボトル(左上)、キャップ・ふた(右上)は同様の傾向であるところ、食品包装容器(左下)の石垣島では、フィリピン製が半数を占めています。

潮の流れ(黒潮、対馬海流)に因るところが大きいと思いますが、浮子(右下)はほぼ中国製であることは、日本の漁船は、適切に回収したり、流出を防止する工夫をしたり、自然素材へと変更したりと、配慮をしている証左でしょう。

また、列島付近では日本製が主流になるということは、国内の流出防止対策も不十分であるということ。つまり、中国や韓国など、外国の対策を批判し、自分たちは被害者だ、のような一面だけを捉えた認識は、慎まなければと反省しました。

プラスチック製品に限らず、適切に回収されず、放置されたごみは、すべからく海へ流出します。なので、「使用しない」「流出させない」という水際対策に注力すべきである一方、当面は、押し寄せてくる海洋ごみに対峙せざるを得ません。

ただ「対処療法」を行おうにも、特に、西表島のような離島にとっては、「回収しても処理できない問題」が立ちはだかります。

今回の視察では、竹富町のごみ処理の要「竹富町リサイクルセンター」も訪問しました。上段中の写真が焼却施設ですが、これが町で一番大きな施設ということ。その大きさから、処理能力は推して知るべし。

竹富町リサイクルセンター

焼却灰は減容処理されて埋め立てられますが、整備されてから半年の状態が
上段右の写真です。あと何年持つのか図りかねますが、面積が限られる島において、このシステムが持続可能なのか不安です。

で、一番の問題は、海洋ごみは竹富町はおろか、石垣市でも処理できないということです。海洋ごみは、多量の塩分を含んでいますし、成分として硫黄酸化物を含有しているものもあります。焼却する際には塩酸や硫酸が発生し、炉材にダメージを与えてしまうのです。

この他、分別されたごみも島内では処理できないため、フレコンに充填されて、フェリーで石垣島や、沖縄本島、あるいは内地へ送られることになります。となると、ここでも費用が発生してしまいます。

2012年に作成された「西表島のマングローブから漂着ゴミをなくすために」によると、西表から石垣へ移送して処理する費用は、フレコン1袋当たり、1万円強という試算がなされています。

フレコンバッグ(トン袋) ¥1,000×100=¥100,000
石垣運搬費(陸送)・処理費 ¥6,300×100=¥630,000
西表→石垣運搬費(海上片道分) ¥735,000
合計 ¥1,365,000

つまり、皆さんがボランティアでビーチクリーン活動に参加し、ごみ回収をしたとしても、その先に様々な費用が発生してしまうという、悲しい現実が存在します。

だからと言って、手をこまねいている訳ではありません。

西表財団では、「世界自然遺産の亜熱帯の森」「日本最大のマングローブの森」「生物多様性を支える海の森」という「3つの森を守る活動」を、企業からの協力も受けながら推進しています。

陸路でアクセスできない船浮湾でのごみ回収も行っていますし、その他のサイトでも回収に努めています。崎山湾での回収も計画されているとか。

冒頭でご紹介したように、全くのボランティアで活動されている方も多くいらっしゃいます。

私個人としても、この現実を目の当たりにしては、何もしないという選択肢はありません。幸い、ライフワークとしているブルーカーボンを創生できるポテンシャルが非常に高い地域ですので、こちらの面でお手伝いをしようと、心に決めました。

吾こそはと思う方々がいらっしゃったら、是非、ご協力を!
一緒に、離島の課題、ひいては、日本の課題を解決に導きましょう。


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園田隆克@GHG削減サポーター
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