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ネットゼロアライアンス 脱退ドミノ?!

先月、CDP主催で「CDP EU Sustainable Finance」という一連のウェビナーが開催されていました。その中の一つを採り上げてみたいと思います。

こちらは、情報開示の現状や、CSRDのベネフィット、スコープ3のベストプラクティス、EUタクソノミーのメリット、カーボン・オフセット、さらに、いわゆるスコープ4(Avoided emissions)まで幅広く取り扱ったもので、座長の下、MSCIの担当者とCDP担当者が対談するという形式で行われていました。

その中で、私が「ナルホド〜」と思ったことがありました。

皆さんも、GFANZという、経済の脱炭素化を加速させることを目指す、主要な金融機関のグローバル連合のことはご存知でしょう。450以上の金融機関が参加し、45カ国からの金融機関が代表されており、そのネットゼロへのコミットメントは総額で130兆ドル以上に上ります​。

その傘下には8つのセクター別アライアンスがありますが、中でもNZAOA(Net Zero Asset Owner Alliance)、NZBA(Net Zero Banking Alliance)、NZAM(Net Zero Asset Manager Alliance)、NZIAの4つが主要なセクター別アライアンスになります

グリーンファイナンスポータル(環境省)より

このイニシアチブについての重要性についての議論をするところ、「脱退が続いているがどうしてですか?」という話題になったのです。メディアでも伝えられており、ご存知の方も多いと思います。

中でも、NZIAは、チューリッヒやスイス再保険、ロイズやアリアンツなどの設立メンバーだけで無く、議長国のAXAも脱退してしまいました。他方、NZAMは、バンガードが脱退していますが、NZIAほどの動きは無いようです。NZBAも同様。

それにズバリ切り込んでいったので、興味津々、聞いておりました。
で、MSCIの担当者がひと言「マーケットの規模を考えてくれ」と

「金の貸し手はいくらでもいるが、保険の引き受け手はどうだ」というわけです。
つまり、投資家は無数に存在し、単独での影響力は一般的に大きくないところ、保険市場の参加者の数は限られており、個別案件における影響は大きいということ。

このような保険マーケットの現状の元に、米国23州の司法長官からNZIA宛ての連名レターが届いたことから、脱退ドミノが発生したのだろうという内容でした。

「保険引受に関して競合会社との合意に基づいて協働することが、反トラスト法に抵触する可能性があり重大な懸念がある」

著者まとめ

保険は保険でも生保はどうなの?という声があるかもですね。
生保はNZAOAの方になりますが、こちらは銀行(NZBA)同様動きは静か。

これについての説明はありませんでしたが、関係性の違いではないかと思います。

銀行や生保は対象が企業や個人である一方、損保は引き受けの対象が航空機や発電プラントなどになりますよね。GHGを排出する主体が違います。前者は、事業活動あるいは日常生活を行うことで排出されますが、後者は、引き受けている動産そのものが排出します。

損保は、直接的に引き受ける動産のスペックを指定できる一方、生保は、契約者の生活を縛るようなことはできないでしょう。銀行も、エンゲージメントはできるが、具体的なクライテリアを設けることは中々難しい。

なので、個人的な見解ですが、アライアンスで要求事項カルテルを結んだ場合の、企業の経済活動に対する影響が大きいとして、司法長官はNZIAに対してレターを送付したのではないでしょうか?

ちなみに、NZIAから脱退したからといって、ネットゼロのコミットを取り下げたということではありません。「コミットのカルテル」を止めただけで、各社とも引き続き、ネットゼロ達成に向けてアクションしていくことを表明しています。

加えて、NZIAから脱退しても、アセットオーナーとしてNZAOAには引き続き加盟している保険会社も多いので、はっきり言って、ネガティブな要因はないのではと思っています。

ということで、CDPのウェビナーのコメントを参考に、つらづらと、保険会社のNZIA脱退の意味するところを考えてみました。いずれにしても、2050年、ネットゼロという時代の波は、後戻りしないということでしょう。

皆さんは、どのように感じられましたでしょうか。
メディアのスタンスに惑わされず、自身のポジションを取っていきたいですね。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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