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セメントセクターガイドラインリリース(7)

ここまで続いた「セメントSDAシリーズ」
6回目までで説明は終了しています。
こちらを参照下さい。

最終回の今回は、SBTi謹製 目標設定ツール「the Science Based Target Setting Tool」を使った、目標設定のご案内です。

ガイドラインでは、短期と長期(Net-Zero)の設定例が紹介されていて、それぞれ、使用するツールが異なります。

短期SBTはこちら。

長期SBTはこちら。

なお、このツールで使用可能なアプローチは、以下のようになっています。

SBT Tool
・Sectral Decarbonization Approach(SDA)
 -Power
 -Services-Buildings
 -Residential Buildings
 -Cement
・Absolute Contraction Approach

Scope 3 Tool
・Absolute Contraction Approach
・Economic intensity
・Physical intensity
・Cement SDA

ですので、これらのツールは他のセクターでも使用できるものの、特にセメントセクターに配慮されていると言えそうですね。

ガイダンスに従って、短期SBTツールの「SBT Tool」シートにおいて、スコープ1・2のデータをこのように入力したとしましょう。

ここで特徴的なのは、基準年のスコープ1・2排出量は算定しておかなければなりませんが、あとは、目標年における生産量を設定するだけでよいと言うことです。

すると、IEAの「Energy Technology Perspectives(2017)」及び「Transition to Sustainable buildings(2013)」のデータを用いて、設定した「SDA senario(1.5℃シナリオ)」に基づいて、この会社のデータに基づいたシナリオが、このように計算されます。

この会社Xは、目標年である2030年には、セメント製造によるスコープ1・2排出量を、基準年である2020年の排出量に対して、28.2%削減しなければならないという結果が得られます。

同時に、目標年に至るまでに達成すべき削減の軌道もグラフ化されます。


さらに、「Scope 3 Tool」シートに、このように入力してみましょう。

購入するクリンカ及びセメントによる排出量は、28.5%削減する必要があるようですね。

なお、セメント製造による排出においては、上流側も算定することが推奨されます。ですので、スコープ3カテゴリー3も目標設定しましょう。入力内容はこちらです。

会社Xは、WB-2C目標を選択しているので、25%削減という結果です。

続いて、長期SBT目標も設定してみましょう。
その際には「NZTool」シートを使用します。

会社Xは、長期SBTにおいては、スコープ1・2・3の総量削減を選択しているので、削減率は95%と算出されました。


いかがでしょうか。

基準年排出量の算定と、目標年における生産量の計画は必要ですが、それだけで「やるべきこと」は分かります。ちなみに「fixed market share」を選択すれば、生産計画も不要です。この場合は。「the global pathway」に基づいて計算され、現在は5.03%になっているとのことです。

まずは、このツールを使って、どれだけハードルが高いかを確認してみるのもいいでしょうね。

さて、ここまで説明してきた、セメントのセクター別ガイドライン。

このガイドラインは「SBT目標設定の支援」を目的としていることに留意しなければなりません。そうです、「削減方法、手段」についてはどこにも記載はありません。この点は、しっかり釘を刺されています。

このガイダンス文書は、セメントとコンクリートのバリューチェーンにおいて、1.5℃の野心に沿った短期及び長期SBTの設定を支援するための基準と推奨事項を提供するものである。目標達成のための脱炭素化の手段については、各企業の戦略次第であるため、詳細には触れていない。

セメントSBTガイダンスより

ここから先は、各社の技術の見せどころでしょう。
「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」
本腰を入れて、先に一歩を踏み出した方が勝ち組になれますよ。
そんな皆さんを応援しています。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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