削減貢献量について考えて見る(4)
WBCSDが発行した、削減貢献量(Avoided Emissions) の算定・報告に関するガイダンスについて、シリーズでご案内しています。
1回目では、「削減貢献量」という概念について私なりの見解を述べました。
2、3回目では、「Eligible claim」、つまり、算定しようとしているプロジェクト/ソリューションが、「削減貢献」を謳う資格があるか否かの要件である、以下の3つのGateについて説明をしたところです。
4回目は、削減貢献量の算定方法を一緒に見ていきましょう。
算定に入る前に、2、3回目で紹介した3つのゲートをクリアしていることを確認しましょう。加えて、ライフサイクル全体での排出量を見積もらなければならない点に留意しておきます。
算定は、次の4ステップ+1ステップからなります。
Step 1では、算定する期間を決定します。
これは、2つのアプローチがあります。
削減貢献量は、「参照シナリオ排出量」ー「ソリューションシナリオ排出量」で計算します。
ですので、それぞれの排出量を算定するところから始まるのですが、それが、1回だけなのか、毎年実施するのかがの違いです。
アプローチAは、スコープ3カテゴリー11の算定方法、アプローチBは、スコープ1・2あるいはスコープ3カテゴリー13の算定方法、と表現すると分かりやすいでしょうか。
アプローチAは「推定」であるところ、アプローチBは「事後」の算定となるので、精度はBの方が高く、望ましい形です。
電力の排出係数が変わったり、政策が変わったり、製品の性能が低下したり、などなど、環境の変化があっても、その後の算定に含まれますから。
アプローチBは毎年算定しますので、Aとは算定方法が異なります。
Bでは、上流の排出量と廃棄に関わる排出量を算定し、耐用年数で除した値を、毎年の使用による排出量に加えます。
その上で、ソリューションを利用した場合/利用しない場合の差分を計算することで算出します。
なお、販売ではなくリースの場合は、耐用年数でなく契約期間を用いることになります。
続いてStep2では、参照シナリオを決定します。
これが一番重要であるのは、ご認識頂けますよね。
ガイダンスには、このような記述があります。
例えば、古い自転車を新しい自転車で置き換える場合「削減貢献」にはなりませんが、自動車による短距離移動を置き換える結果となった場合は、「削減貢献」となるわけです。
まぁ、この事例は「3つのゲート」をクリアしないので「削減貢献量」は発生しませんが、同じ製品での代替ではなく、同じ目的での代替もしくは新規導入が生じることも予測して、シナリオを決定しなければならないということです。
なお、「認識され、十分に文書化された仮定」は何であれば妥当なのかは、言及がありません。TCFDで用いるような、IPCCやIEAシナリオなどは、マクロすぎて利用しづらいと思います。このあたりは、やはり、業界別の対応が望まれます。
さて、ガイダンスには、参照シナリオの決定にあたり、以下の2つのシチュエーションが示されています。
「a) 新規需要」であれば、同じ年に導入される設備であって平均的な排出量を有するものです。「平均的な」という表現は、「最も一般的に選択されるであろう」ということと同義であると思います。「トップランナー」ではないでしょう。
「b) 既存需要」であれば、規制によるものか否かで異なります。
「b-1) 改善ケース」without 規制
→既存設備の継続的使用
「b-1) 改善ケース」with 規制
→規制に合致した設備
「b-2) 更新ケース」without 規制
→上市されている平均的な設備
「b-2) 更新ケース」with 規制
→耐用年数まで既存設備の継続的使用+規制に合致した設備
ガイドラインには、このようなディシジョンツリーが用意されていますので、参考になさって下さい。
削減貢献量算定のStep 2まで見てきました。
次回は、Step 3から説明していきたいと思います。
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