SSBJオープンセミナー(5)
3月7日に開催されたSSBJのオープンセミナーで紹介された、「審議の過程で意見が分かれた主な項目」に対する基準案及び代替案の紹介と理由について、ご案内しており、今回が5回目です。
こちらのサイトから、当日の資料はダウンロードできますので、noteと併せて参照ください。
当日説明があったのは、次の「主な9点」です。
前回は、2つ目の論点までご紹介しました。
今回は、3つめの論点を見ていきましょう。
1と2は概念的な内容だったため、スタンダードセッターのSSBJでは重要であり、背景を含め丁寧な説明をされていましたが、私としては、半分上の空。ですが、この論点は実務に直結するだけに、前のめりになりました。
ただ、ASBJ/ISSBという財務側の組織主催ということもあり、参加されている層が偏っていたのか、会場にはそのような雰囲気はあまり感じませんでした。「算定の困難さを理解している人が少ないのか」という、一抹の不安を感じた場面でした。
閑話休題、結局、この論点はこういうことです。
で、論点となるのは「スコープ3算定の困難さ・曖昧さ」に起因します。
ひと言で言うと、スコープ1・2とスコープ3では、そもそもデータの種類・質が異なっており、それを合計してしまうのはいかがなものか?ということ。
絶対量という「数字」が独り歩きする可能性があり、特に、スコープ3は他社比較を目的としないことを前提としながらも、利用者側は「比較検討材料」としてしまうのではないか、という懸念がついて回ります。
と、背景と私見を述べた上で、基準案、代替案をご案内しましょう。
まずは、基準案です。
ISSB基準は、次の代替案のように、スコープ1、スコープ2、スコープ3のそれぞれの絶対値を開示することまでしか求めていないところ、3つのスコープの合計値まで公開すべきというのが、SSBJ基準案です。
このように判断した理由は、次の3点。
対象企業が上場企業全体から狭められたこともあり、「できる・できない」であれば「できる」でしょう。また、今回の対象企業は、欧州のCSRD対象となっている場合が多いことも想定されますし、バリューチェーン全体の排出量を目標値している可能性も高いでしょう。
ですが、それを考慮しても「根拠」としては薄すぎではと感じます。
SSBJがどれほど現場を熟知しているか分かりませんが、私としては、皆さんからのフィードバックを是非とも聞いてみたいところです。
続いて、代替案。
こちらは、想定通り「ISSB基準と同じ」です。
代替案を主張する委員の言い分は、ISSBは合計値の開示を要求していないところ、「上乗せ基準」をする必要は無いというのが一点。加えて、先ほど述べた「スコープ1・2とスコープ3のデータの質」の違い。
削減のためのアプローチや進度が異なり、企業が判断すべき事項であることを考慮すると、基準が画一的に要求するものはナンセンスと主張していました。もちろん、合計値の目標を立てている企業は開示すればよいが、していない企業が敢えてやる必要は無いだろうと。
当日説明を聴きながら、「そうだよね」と相づちを打ちましたね。
セミナー前日、SECが「スコープ3は対象としない」旨明らかにしたことを受けて、タイムリーではありました。欧州と足並みを揃えるのではなく、一歩先を行きたいのでしょうか?
皆さんは、どのようにお考えになりますでしょうか。
ということで、是非とも、自分たちの意見を届けましょう。
繰り返しになりますが、今回のSSBJ基準の適用対象は「プライム上場企業又はその一部」を想定したもの。それ前提にフィードバックしましょう。
それでは、次回は、次の4つ目の論点について説明して参ります。
お楽しみに。
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