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未来社会をデザインするためのLCA

昨日開催された、未来戦略LCA連携研究機構の第2回シンポジウムに参加してきました。

GWPを使用して、温室効果ガス(主に国連にインベントリ報告をしている7ガス)の排出量を、CO₂1トン当たりの排出量に換算することも、それぞれの排出量を算定している(LCI インベントリ)のではなく、気候変動影響を「t-CO₂e」で評価しているので、LCA(アナリシス)の一種です。

ですので、サスティナビリティ情報開示や排出量算定とLCAは密接に関連しており、皆さんのご関心も高いと思いますので、特に、冒頭の、東大醍醐先生の話について、簡単に内容をシェアしておこうと思います。

と言いながら、自身「未来戦略って何だ?」状態だったのですが、参加して「ナルホド」でした。今まで、おぼろげながらに「そうだよね」と感じていたことが、明確になった思いです。

それは、一言で言うと「タイムスパン」の概念です。

例えば、皆さんが算定業務の中で当たり前のように使っている、DB。環境省が公開している産業連関表ベースの排出係数であったり、温対法の報告に用いる排出係数であったり、産総研が有償で提供しているIDEAであったり。

実務では、最新の係数でないとか、適切な係数が無いとか、悩みは尽きませんよね。有償、無償の問題もありますし。

とはいえ、電気・ガスの事業者別排出係数は環境省が当該年報告用の係数を公開しますし、その他の温対法報告用の係数も、総合エネルギー統計の更新に併せて、あるいは、重要な変更があった場合には更新する方針に変わりましたし、IDEAも適宜バージョンアップがなされます。(有償ですが)

私が言いたいのは、このような意味での「最新」「適切」ではありません。
もっと長い、タイムスパン。

今はまだ研究開発段階で、非常に高コストな技術も、5年後、10年後、20年後は、どうなっているか分かりません。もちろん、消え失せているものもあるかもしれませんが、汎用技術となり社会実装され「当たり前化」しているかもしれません。

80年代、インターネットも携帯電話もありませんでした。
スマートフォン時代の先駆け的存在であるブラックベリーが、2008年に就任したオバマ大統領が駆使していたことで話題になりましたが、「使用に耐える」スマホは、2007年のiPhoneを待つ必要がありました。(個人的見解です)

これらの技術は、既に汎用技術となっており、製品はコモディティ化しています。「高コスト」とは無縁の段階に来ています。もちろん、更なる通信速度や、半導体の集積化を目指せば「高コスト」でしょうが、必要十分であれば、どの製品も競争力は備えていると言えるでしょう。

翻って、脱炭素化技術です。

2030年断面では、既に汎用技術となっている製品を導入すれば、現在よりも、容易かつ安価に、排出量削減が実現出来るだろうと思いますよね。

バックキャスティング的な視点がLCAに必要ではないか
社内実装されるタイミングを見計らって戦略を策定すべきではないか
2030年、2050年を想定して、今何をすべきかを考えるべきではないか

このような問題意識から立ち上がったのが、「未来戦略LCA連携研究機構」であり、このような視点に基づいたLCAが「未来戦略LCA」であるとの説明がなされました。

また、LCAの研究者は、LCAの専門家ではあるが、個別技術の専門家ではない。ということで、東京大学の大学院、研究所、研究施設を始め、産総研や国環研、さらに民間企業とも「連携」しているとのこと。納得です。

将来評価において考慮すべき要素としては、次の4点が挙げられました。

- 効率向上
- 市場シェア
- 新プロセス
- 新材料、新製品、新システム

これを踏まえた上で「 未来社会をデザインするためのLCA」を実践するのが、「未来戦略LCA連携研究機構」であるとまとめられました。

カーボン・ニュートラリティが実現された2050年は、どのような世界になっているのでしょうか。楽しみです。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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