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ICAP Status Report リリース(1)

毎年楽しみにしているレポート、ICAPの2023年版がリリースされました。

ICAP(International Carbon Action Partnership)が2014年から発行しているレポートで、世界のETS(Emissions Trading Systems 排出権取引制度)の現状を包括的に取り扱っています。

EU-ETSは2005年開始、国内クレジット(現 J-クレジット)は2009年開始。
私も、2009年よりクレジットに携わってきましたが、当初は、ETSについての情報が殆ど無い状態で、今やっている業務が、気候変動対策になるのか、世界的にスタンダードなのか、自信を持てずにいました。

そんな時に出会ったのが、このレポート。

何が素晴らしいのかは、一目瞭然。
何と言っても、この「世界のETS導入マップ」です。

既に実施中なのか、試行中なのか、検討中なのかが色分けされています。
どの国が、どの地域が制度を取り入れているのかが、一目で分かります。

どうですか?
日本では、ようやく今年23年の4月からGX-ETSの第一フェーズが開始となりますが、世界はこんなに進んでいるんです。

国内にいると分かりませんが、中国や韓国は遙か先を行っています。
EUやカリフォルニア、RGGIなどはご存知かもしれませんが、ニュージーランドやカザフスタンも、以前から導入しているんですよ。

レポートの愛読者にとっては、こちらも定番です。

ETSがカバーしている排出量の、年毎の変化です。

2005年から開始されたEUが草分けで、2008年には、すでにニュージーランドが加わっています。

2010年、2011年には、それぞれ、東京都と埼玉が開始となっています。
この頃国は「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」なるものを行っていました。

環境省ウェブサイトより

しかし、経産省と環境省の綱引きで「試行」が続く中、国には任せられないとばかりに東京都が「総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)」を独自に開始、経済的な結びつきが強い埼玉も、仕方なく(?)「目標設定型排出量取引制度」を開始しました。

経緯はどうあれ、東京都の制度は、まれにみる成功を収めているとして、高く評価されています。

その時の日本に学んでいたのが、中国です。
2011年には既に視察に訪れ、情報収集。
2013年、2014年に地域のパイロットETSを開始。
10年かけて綿密に設計し、満を持して2021年全国ETSを稼働させました。

アジアでは先頭を走っていたと思っていたら、あっという間に置き去りにされ、二国の背中は遠い向こうに行ってしまっていたのです。

これを踏まえて、先ほどの棒グラフを見て下さい。
2021年に濃い紫色のバーが伸びていますよね。
そうです、CN-ETSです。
一気にEUを抜き去り、対象となる排出量はダントツに躍り出ています。

「in force」とならなければグラフに加わりませんので、GX-ETSが来年のレポートで加わっているかどうかは、不明ですね。

もう1つ特徴的なグラフが、ETSがカバーしているセクターです。

以下の、8つのセクターに分かれて表示されています。

・Power
・Industry
・Buildings
・Transport
・Domestic Aviation
・Waste
・Forestry
・Agriculture

一番外側の数字は、全排出量に対するカバー率です。

注目してほしいのは、ニュージーランドです。
カバー率は49%と普通ですが、セクターはAgriculture以外対象です。
特に、Forestryを対象としているのは、他にありません。
老舗のETSだからこそできる技。多くの知見が蓄積されているんですね。

ということで、今回はさわりだけお伝えしました。
次回は、内容を簡単に紹介していきますね。
お楽しみに。

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