セメントセクターガイドラインリリース(6)
セメントSDAの説明も6回目。
今回は、タイプ別の目標設定方法についてご紹介します。
前回までは、こちらになります。
セメント及びコンクリートバリューチェーンに属する企業の例として、SBTiは次の4種類を挙げています。これら4つのタイプの会社が、セメントSDAを使うことになります。
1.セメントとコンクリートの両製品とも生産している会社
クリンカ製造がスコープ1排出量の95%以上を占める場合は、全ての生産活動の目標設定にセメントSDAを使用可能です。
一方、コンクリートを製造するセメント会社で、クリンカ製造による排出が5%より多い場合、スコープ1と2の目標のうち、コンクリート製造に使用する燃料と電力からの排出をカバーする部分は、クロスセクター総量削減により計算し、クリンカとセメント/セメント質製品製造による排出量は、セメントSDAを使用することができるとしています。
2.クリンカを製造しないセメント会社
例えば、自社でクリンカを製造せず、 クリンカやセメントやその他の成分を購入し、セメントやセメント代替物(高炉水砕スラグ(GGBS)など) 、セメント類似物(ジオポリマーなど)として販売する会社などがこのケースです。
この場合、購入したセメントやクリンカからの排出量は、無条件にスコープ3カテゴリー1で算定する必要があります。2回目で説明しましたが、覚えていますか?
さらに、その目標は1.5℃目標に整合的なものとする必要があります。
ご注意下さい。
これは、排出量が多くなる製品の生産を購買に変更することにより、自社の排出量を削減する「リーケージ」を防ぐためでしたね。
このタイプの会社がとるべき目標設定方法は、こちらの表を参照下さい。
3.クリンカ及びセメントを製造しないコンクリート会社
このケースは、例えば、自社でセメントやクリンカを生産していないが、生コンやプレキャストコンクリートを生産するためにセメントや骨材やその他の構成要素を購入している会社が当てはまります。
ケース2と同様、購入したセメント及びクリンカからの排出量は、スコープ3カテゴリー1で算定します。目標設定方法も、前述の表を参照下さい。
4.建設業などのコンクリートユーザー企業
購買品にコンクリートが含まれるため、ケース1〜3と同様にセメントSDAを採用することができます。この場合、当該品からの排出量は無条件にカテゴリー1で算定することになります。
しかしながら、建築セクター別ガイドラインが近々発行予定であり、その中でアロケーションなどの詳細が説明されるとのこと。
加えて、そのガイドラインでは「需要削減の重要性からセメントSDAの使用を禁止することができる」とあるので、実務としては、そのSDAの発行を待ってから目標設定した方がベターでしょう。
セメントSDAによるScope1と2の短期SBTにおいては、別々に目標設定することもできるし、統合することもできます。で、設定に当たってSBTiは「目標設定ツール」を用意しているのですが、それを用いた場合は、個別に計算して合算したものとは若干異なるので、ご留意ください。
というのも、統合した場合と個別に設定する場合の、採用する収束軌道が異なるからだそうです。
また、スコープ3に関して、セメント会社は、購入したクリンカとセメントを対象とした目標を設定する必要がありますが、その方法として2つの選択肢があります。
以上が、大まかなセメントSDAのご案内になります。
難しいように感じますが、SBTiは上記の「目標設定ツール」を用意しており、これを利用することで簡便に目標設定を行っていくことができます。
セメントSDAシリーズ最終回として、その使用例を紹介したいと思います。