クレジットのおさらいをしておこう(2)
政府が21年の年末から22年6月にかけて「カーボンニュートラルの実現に向けたカーボン・クレジットの適切な活用のための環境整備に関する検討会」を6回開催。その成果物としてまとめた「カーボン・クレジット・レポート」を利用して、クレジットのおさらいをしています。
前回は、コンプライアンス・クレジットとボランタリー・クレジットの区別、及びボラクレのプログラム(スキーム)についてご案内しました。
今回は、プロジェクト(方法論)の種類についてご案内していきます。
上図のように、大きく「排出回避/削減クレジット」と「吸収/除去クレジット」に分けられます。
英語では「Avoidance Credit」及び「Removal Credit」と呼ばれます。(レポートでは「固定吸収/貯留」となっていますが、こちらが一般的と考えており、以降この表記で説明します)
さらに、それぞれ、自然ベースなのか技術ベースなのかで分類されます。
前者は、自然に対し人為的に関与することで、減少を回避あるいは吸収量を増やすことで生み出されるクレジット。後者は、科学技術によって、従来であれば排出されたであろうGHG量と比較して削減された量、あるいは過去に排出されたGHGを除去・貯留した量がクレジットとなります。
さて、カーボン・クレジット・プログラムと同様、方法論毎の発行量及びプロジェクト数を見てみましょう。
前回同様、カリフォルニア大学バークレー校の大学院である「The Goldman School of Public Policy」が公開している「Voluntary Registry Offsets Database 2023」を利用しています。
方法論毎のプロジェクト数がこちら。
Household & CommunityとRenewable Energyが突出しており、Forestry & Land Useが続いています。
Household & Communityが分かりにくいですが、ほとんどがクックストーブです。石炭や薪、木炭などの燃料を使用する従来の調理器具を、ガスコンロや電気調理器、バイオマスや太陽熱を利用する高効率の調理器具に置き換えるプロジェクトです。
このプロジェクトは、GHG排出削減だけでなく、煙や有害な微粒子が発生しないため健康リスクが低減できますし、森林伐採の抑制にもつながるため、サハラ以南のアフリカや南アジアで広く実施されています。
発行量を見ると、Forestry & Land Useが逆転してダントツ。Renewable Energyが続きますが、Household & Communityはその他のプロジェクトと同程度に落ち込んでいます。
家庭毎に導入するのでプロジェクトの数は増えますが、削減量はごくわずかですので、総量としては少なくなるのは当然の結果。他方、森林吸収などが含まれるForestry & Land Useは、1件あたりの吸収量が数万〜数十万トンレベルなので、総量は躍進するのです。
クレジットについて、プログラム及びプロジェクトの種類について具体的に見てきましたが、いざ活用していこうとなった際に問題になるのは、クレジットの質でしょう。
地球環境保全に資すると思って購入したクレジットが、実はウォッシュであったとなれば、企業の信用問題に直結します。ウォッシュ批判に晒されないクレジットを供給できなければ、買い手は二の足を踏んでしまいますし、利用が進まないとプロジェクトが持続可能なものとならず、クレジットの目的を達成することはできません。
それでは、ウォッシュの誹りを受けない「高品質なクレジット(High Integrity Credit)」とは、どのような要件を満たしているべきでしょうか。
こちらについては、次回ご案内したいと思います。
もう少し、お付き合い下さいませ。