GFANZの展望と将来(1)
サス担の皆さんの中には、GFANZをご存知の方も多いでしょう。
正式名称は「Glasgow Financial Alliance for Net Zero」、2021年に発足した、世界の金融機関がネットゼロ目標達成に向けて連携するための枠組みです。GFANZは、銀行、資産運用会社、保険会社など幅広い金融機関から成り立ち、それぞれのセクターに特化したアライアンスを設置しています。
そのメンバーである、Net-Zero Asset Managers(NZAM)、Net-Zero Banking Alliance(NZBA)、Net-Zero Insurance Alliance(NZIA)などのイニシアチブは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという共通目標を掲げています。
GFANZはその発足以来、多くの金融機関が参加し、特に初期段階では参加企業の数が順調に伸びていたようです。2023年時点では、50カ国以上から675を超える金融機関が参加し、その総資産は世界の民間金融資産の約40%に達していたとのこと。
しかし、こうした中、昨年からGFANZを構成するネットゼロ・アライアンスからの主要金融機関の脱退が相次いでいます。特に、米国の大手銀行や資産運用会社がこれらのイニシアチブから離脱する動きが顕著です。
主要金融機関の脱退状況を列挙すると...
この「脱退ドミノ」。さすがに創設メンバーであるBlackRockの表明は効いたのか、NAZAMは直後、これまでの活動をレビューし、結果が出るまで、一時主要な活動を中断すると発表しました。
相次ぐ脱退の背景にある政治的および政策的環境の変化に対応するため、活動の再評価と戦略の見直しが必要だと判断したようです。この発表は、GFANZ全体の方向性に一定の影響を及ぼすことは確実でしょう。
ESG Todayの記事によると、これらの脱退の背景には、米国における反ESG(環境・社会・ガバナンス)運動の高まりがあるとのこと。特に、テキサス州などの共和党主導の州では、エネルギー企業への投資を避ける金融機関に対する制裁や法的措置が取られているとか。
例えば、テキサス州はブラックロックやクレディ・スイス、UBSなどを「エネルギー企業をボイコットしている」として投資禁止リストに掲載したり、、同州はブラックロックやバンガードを対象に、ESG投資を通じてエネルギー市場を操作しているとして多州間での訴訟を提起したり。
まぁ、NZAMなんかに構ってられないといったところでしょう。
ということで、米国金融機関の「脱退ドミノ」について、ご紹介してきました。次回は、欧州や日本はどうなのか、GFANZはどこへ向かうのか、について自分なりの意見をお届けしたいと思います。