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EFRAG案からの修正点

欧州議会とEU理事会が、CSRD、昨年22年の11月、それぞれにおいて採択され、発効した旨はお伝え済み。

CSRDにおいて開示が要求される項目の詳細はESRSで定められ、欧州委員会から依頼を受けてEFRAGが草案を作成、2022年11月22日に欧州委員会へ提出され、審議がされていました。

ようやく委員会内での審議において、いくつかの修正が加えられて「委任法(DA)」がまとまり、パブコメにかけられていましたが、詳細は不明でした。

伝えられていたのは、修正のポイントで、以下の3点でした。

1.ISSBとの相互運用性を高めること
2.中小企業などの報告負担を軽減すること
3.開示要求(DR)のほとんど全てを重要性の考慮の対象とすること

なので、この時のリリースから分かる範囲内で、2回に亘って概略をご説明しました。個人的には、この修正ポイントの方向性には賛成でしたので、あとは、どの程度深掘りされているかが気になるところでした。

そんな中、6/14に開催された、EFRAG SRB(Sustainability Reporting Board)のミーティングにおいて、ECのFISMA(Financial Stability, Financial Services and Capital Markets Union: 金融安定・金融サービス・資本市場同盟総局)がEFRAG案からの修正内容を説明したようです。

EFRAG案の審議に当たって、まずは、下記の現状を配慮したそうです。

- 持続可能性の危機、欧州グリーンディール、持続可能な金融課題
- コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、厳しい経済状況

FISMAプレゼ資料より

これを受けて、「報告義務を25%削減する」ことを念頭に置き、下記のアプローチを取ったとしています。

-CSRDの野心的な目的との整合させる
-EFRAGの技術的専門性を尊重する
-全体的なパッケージ(12基準)を維持する
-比例性と柔軟性、特に導入初期及び中小企業に配慮する

FISMAプレゼ資料より

まぁ、中小企業配慮等の点で、大幅な修正は加えているものの、EFRAG案を尊重して、全体としてのパッケージは維持していますと。それを、説明に来たのが、FISMAの本当の狙いだったのでしょうか。

さて、EFRAGの助言と比較した主な修正点は、この7点。

1.重要性
2.段階的導入
3.一部の開示を任意とする
4.その他の的を絞った修正
5.EUの法的枠組みとの一貫性
6.グローバルスタンダードとの相互運用性
7.編集と表示方法

FISMAプレゼ資料より

「3.一部の開示を任意とする」は、前回述べたように「自社にとって重要と判断したもののみを開示すれば良い」という意味で、その対象がEFRAG案から拡大したということです。

FISMAのプレゼ資料に分かりやすい図がありますが、「ESRS E1 Climate change」が全て対象になっています。なので、「ESRS 1 General requirements」「ESRS 2 General disclosures」以外は、「重要性」に応じて開示すれば良くなったということですね。

Approach to materiality

「2.段階的導入」では、EFRAG案に、下記追加がなされています。

従業員750人未満の企業
a) スコープ3のGHG排出量の1年間の段階的導入
b) 自社従業員基準ESRS S1に対する1年間の段階的導入
c) 生物多様性に関する2年間の段階的導入(ESRS E4)
d) バリューチェーン従業員(ESRS S2)、影響を受けるコミュニティ(ESRS S3)、消費者・エンドユーザー(ESRS S4)に対する2年間の段階的導入。

FISMAプレゼ資料より

すべての企業

a) 汚染、水、生物多様性、資源利用/循環型経済において予想される財務的影響に対する1年間の段階的導入。
b) 特定の社会指標(障害者、社会保護、家族休暇等)の1年間の段階的導入

FISMAプレゼ資料より

2と3は、極めて妥当な修正だと考えます。というのも、

1.NFRDからCSRDへの変更 (法的拘束力無し→法的拘束力あり)
2.対象企業の拡大 (従業員500名以上の上場企業11,700社→上場している中小企業を含む50,000社)

と言うことを考慮すると、当然でしょう。
そもそも、今まで算定なんてしていなかった企業が、いきなり法律で算定結果を開示しろと言われる訳ですよ。

「比例性と柔軟性、特に導入初期及び中小企業に配慮する」という、
背景を踏まえたアプローチがしっかり実現されている箇所ですね。

「6.グローバルスタンダードとの相互運用性」は、noteで繰り返し述べている「Interoperability」のことです。

ISSBと2者協議を行い、下記変更を行ったそうです。

- 炭素クレジットを除く、IFRS S2及びESRS E1の気候変動に関連する定義の共通化
- 財務上の重要性に関し、完全に整合性させるための数カ所の変更
- ESRS第1号の財務上の重要性の概念の変更
- 「潜在的な財務的影響」において「潜在的な」の代わりに「予想される」を使用
- 「現在の財務上の影響」という場合の「現在の」の定義の明確化

FISMAプレゼ資料より

現在のISSBにおける、サスティナビリティ関連の開示項目は、ほとんどがSASBであるところ、このSASBもEFRAGだけで無く、幅広く「Interoperability」プロジェクトを実施しているので、開示ルールの統合化が、今年ますます進展しそうです。

まぁ、環境NGO/NPOや、環境系のイニシアチブからは、「骨抜きにされた」とかいう声も上がりそうですが、個人的にはこれで良いと思っています。

日本みたいに、「完全」な仕組みを作ってから運用していては、時機を逸するのです。開示に関しても、グローバルスタンダードの「Learning by Running」で行ってほしいです。

まずは、誰もが参加できるフレームワークを作り、必要に応じ、ブラッシュアップしていく。

「No one will be left behind」というSDGsの理念と同じ、世界ワン・チームで行きましょう。


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園田隆克@GHG削減サポーター
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