「作る」から「使う」へ、フェーズチェンジ始まる
欧州委員会がESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サステナビリティ報告基準)の最終版を公開したことを受け、EFRAGが、報告の核となる2つの重要な概念についてのガイダンスを発表しました。
これにつていは、noteで順次ご案内していこうとしているところです。
(執筆段階で、1まで説明済み)
対象が大企業及び大手銀行に限られていたNFRDから、上場している中小企業まで含む50,000社へと拡大することから、欧州委員会は、2022年11月のドラフト公開時から、ショートバージョンとレギュラーバージョンの2種類の解説動画を用意するなど、キャパビルに腐心していました。
キャパビルといえば、CBAMの方も、気合いが入っています。
23年10月から、Reporting Period が始まり、24年1月末には最初の報告期限となるので、対象セクターを輸入している事業者は、対応に追われていることでしょう。とはいえ、移行期間の規則及び附属書は非常に分かりにくい。
なので、9月15日のセメントセクターを皮切りに、アルミニウムなど、対象6セクターそれぞれに特化したウェビナーを開催予定です。(残念ながら、終了済及び受付終了のウェビナーもありますが)
こちらのサイトの下の方に、案内があります。
ちなみに、EUは、その他の税制に関するキャパビルも積極的に行っており、こちらのポータルからアクセスできるようになっています。
ダブルマテリアリティのCSRDと相対する、シングルマテリアリティの立場を取るIFRS S1・S2については、ISSBがTCFDやSASBなど、これまでのルールに準拠して報告していた企業のスムーズな移行を促すべく、TIG(Transition Implementation Group)を立ち上げました。
移行に当たって、「あらゆる利害関係者がISSBと実施上の疑問点を共有し、それらの疑問点の議論をフォローするための公開の場を提供すること」を目的としており、「権威あるガイダンスを公表することはない」としていますが、ご意見番、IPCCのような役回りを果たすのではないでしょうか。
欧州委員会のCSRDやCBAMにおけるキャパビルや、IFRSの制度移行に当たっての障害の把握及び解消も、それぞれが定めたルールを「使ってもらう」ための取組である点は一緒。そうです、製品やサービスと同じで、「基準」「規格」も使ってもらって初めて、その目的を達成することができるのです。
他方、認定する側にも、動きが出ています。
もはや、グローバル企業における削減目標を「認定」するデファクトスタンダードとなってしまったSBTiは、9月13日、「検証サービス部門を分離し、科学的根拠に基づく目標を設定する企業や金融機関の信頼性と完全性をさらに高めること」を発表しました。
そのために、新理事長と2名の独立評議員を迎え入れ、基準設定と検証部門を分離するとしており、年内に、公益財団法人化を目指すようです。
同時に、5つの変革プログラムも公表しました。
法人化により、人員の増強を通じて、検証スピードが向上するメリットがあるかとは思いますが、他方、検証部門が独立することにより、目標設定にあたり使用した排出量等の算定結果について、検証が求められる可能性があります。
CDPのスコアを上げるためにSBTi認定を目指す企業が多いことを考慮すると、ますます検証の需要が高まると思われます。
このような、認定する側における、透明性、中立性を担保するための組織変更も、企業側に「使ってもらうため」の動きと言ってよいでしょう。
以上のような、自主的・義務的にかかわらず、様々な情報開示ルールや認定において「作る」フェーズから「使う」フェーズへ移行し始めていると思います。
是非とも皆さんに使って頂き、「脱炭素化社会の実現」を一緒に目指していければと思います。これからも、情報発信続けていきますので、よろしくお願いします。