大波乱のSSBJ第30回会合(2)
前回ご報告したように、2月6日に開催された第30回サステナビリティ基準委員会は、金融庁野崎課長の適用対象企業に対する爆弾発言による、これまで委員会で重ねてきた議論が瓦解しかねない状況となりました。
課長の発言中に、以下の文言が繰り返し散りばめられていたことからも、SBBJが適用対象と想定していた有価証券報告書提出企業、あるいは、プライム・スタンダード・バリューといった上場企業のうち、「グローバル」でない企業からのクレームが多数寄せられていたことが想定されます。
「グローバル」な企業といえば、CSRDのセクター別及びEU域外向けESRSの適用を、2026年6月30日まで2年後送りする法案を欧州委員会が提出、EU理事会及び欧州議会が暫定合意に至ったことは、ご存知の方も多いでしょう。
とはいえ、マーケットが欧州を含めた「グローバル」な企業に対する開示要請は高まっているため足踏みはできないところ、バリューチェーンで繋がっているとはいえ「ドメスティック」なマーケットが基本の中小企業も多数上場しています。一括りにされたらたまらない、ということも理解できます。
折衷案として、「プライム上場企業又はその一部」という表現が出てきたものと邪推しています。ただ、「具体的な適用時期」「適用対象」「情報の信頼性を高める保証のあり方」は金融庁内で議論を進めるとしていますので、「気を抜くな」と言うことでしょうか。
個人的には、「プライム上場企業又はその一部」とする大企業は、CSRDよりもCSDDD(企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令:Corporate sustainability due diligence 略しても長いので「CS3D」と称されることも)の方が、その威力は大きいと思います。
この指令は、大企業が、その川上の取引先や、流通やリサイクルといった川下の活動の一部を含むビジネスチェーンにおいて、環境や人権に及ぼす実際の、そして潜在的な悪影響に関する義務を規定したもの。
対象企業は特に以下のことを実施しなければなりません。
で、何と言っても、コンプライアンス違反のコストが莫大。
金銭的制裁は、企業の全世界の純売上高が基準で、上限は全世界の純売上高の少なくとも5%。加盟国は上限をさらに高く設定することも可能。民事責任も問われ、グループ会社や子会社が引き起こした場合、連帯責任も負わされるとか。
立件、差止命令による救済、損害賠償請求の制限期間(少なくとも5年)の開始と存続、証拠開示と 証拠保全など、損害賠償に対する国内的な法的手段を確保する義務を規定するなど、被害を受けた側に非常に手厚い指令となっています。
EU 理事会と欧州議会の間で審議されていましたが、2023 年 12 月 14 日、CSDDD 案について両者の間で暫定的な合意に至ったとのプレスリリースがそれぞれの機関から公表されました。
加盟国の法律に基づいて設立された企業(「EU企業」)と、第三国の法律に基づいて設立された企業(「非EU企業」)の両方が適用対象となるので、日本の「グローバル」な企業も対象になります。
合意内容を反映した文書は未公表ですが、対象となる具体的な区分については、欧州委員会の当初の草案では次のようになっています。(変わる可能性もありますので、ご参考まで)
適用開始時期については、、EU 理事会のプレスリリースでは、CSDDD発効から3年後(2027年?)と言及されているので、CSRDやSSBJの審議状況をウォッチングしつつも、「グローバル」な企業は、まずは「CS3D」対策をに注力すべきというのが、私の考えです。
ということで、タイトルの内容からは少し外れましたが、皆さんに「Foresight」をお届けするのが、私の「mission」。「知らなかったよ」とならないような、お手伝いをしていきたいと思っています。
さて、金融庁の野崎課長が退席されてからは、通常の委員会となりました。
次回は、その模様を簡単にお届けしたいと思います。
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