第三者検証〜はじめの一歩(4)
温室効果ガス排出量算定結果の第三者検証を受審するに当たって、躓きやすいポイントをご案内していく「はじめの一歩」4回目。
3回目では、算定の「基本5原則」をご案内しました。
これを踏まえた算定を行っていることを前提に、受審企業と交わした「保証水準」の契約に基づき、以下の何れかの意見表明を行うのでした。
覚えていらっしゃいますか?
今回から、審査の流れに沿って、具体的にご案内していきたいと思います。
検証プロセスは、このように、事業者と検証内容についての合意することから始まります。(検証の「準備」としては、この前にいくつかのステップがあるのですが、それについては後述します)
一番最初に「保証水準」がありますよね。
それくらい、重要だということです。
その他も含めて、どのような合意をするかというと、こんな感じです。
「保証範囲」は「保証業務に適用する基準」によって定まります。
この例では、「主題情報に適用する基準」が「株式会社○○が定めるGHG排出算定手順」になっています。「プライベート検証」と称されるもので、企業が独自に定めたルールに基づいて算定した結果を検証します。
この手順には、組織的範囲(どこまで算定に含めるのか)、時間的範囲(どの期間の排出量を算定するのか)及び保証対象データ(何を算定対象とするのか)が、上記のように書いてあるので、検証機関は「その手順にしたがって、間違い無く算定されているのか」を検証することになります。
その際、「保証業務に適用する基準」で合意している「ISO14064-3」という「妥当性確認及び検証のための仕様」を定めた規格に則って検証します。
この例では、「保証水準」が「限定的保証」となっていますよね。
サスティナビリティ報告やTCFDに基づいた開示などが目的の場合「金銭的取引」が発生しないため、「限定的保証」とする場合が多いと思います。
環境省の「SHIFT事業」は排出量削減を条件に補助金を支給するものですので、「ISO14064-1(組織の排出量の定量化及び報告のための仕様並びに手引)」という規格に基づいた算定及び「ISO14064-3」に則った「ISO14065」の認定を受けた検証機関による「合理的保証」を求めています。
(「ISO14065」については、別途ご紹介します)
「合理的保証」は検証する側の負荷も非常に大きく、検証費用も高くなり、実施期間も長くなります。ですので、上記のような補助事業、あるいは、売買を目的とするクレジット創生以外は、「限定的保証」とするか、もしくは、保証水準について言及しない場合が多いと思います。
「組織的範囲」の具体例として、皆さんに馴染み深い、温対法の報告(SHK制度)を考えてみましょう。
この場合は「事業者単位」ですので、個社、自社のみが「組織的範囲」となります。(以前は「事業所単位」でしたので、工場毎に算定していました)
他方、GHGプロトコルでは、子会社も含めた企業グループが「組織的範囲」です。また、国内外に限らないのも温対法との相違点です。
「時間的範囲」は、適用する基準が国内であれば「年度」、海外であれば「暦年」となることが一般的。ただ、柔軟に対応できるルールになっている場合が多いです。(日数は合わせますけど)
「重要性の量的判断基準」は、「適用する基準」により、明確に示しているものもあれば、「組織が決める」としているものもあります。ただ、いずれにおいても、その基準の適切性(Relevance)及び一貫性(Consistency)が求められます。
ここまで、合意内容とその意味についてお話ししてきました。
少しずつ、イメージは湧き始めましたか?
次回は、検証を受けるに当たって、受審企業はどのような準備が必要か、詳しく見ていきたいと思います。
お楽しみに。
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