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ICAP Status Report リリース(2)

カーボン・クレジットに関わっている人にとって重要なレポート、ICAPの2023年版がリリースされましたので、そのご案内をしております。

1回目はこちらです。

2回目の今回は、ファクト、数字を抑えていきましょう。

まずは、世界で、どの国、どの地域でETSが導入されているか。
こちらのマップは、1回目でもご案内しましたが、重要なので再掲。

現在のステータスが、色分けされて表示されています。
東京と埼玉は「In force」なのでは?と思った方、鋭いですね。
確かにそうなのですが、日本(Japan)全体としては「Under consideration」
なので、その影に隠れてしまっているんです。

ようやくGX-ETSが、23年4月からフェーズⅠが始まりますが、「In force」となるのか「Under development」になるのか不明です。試行の取り扱いなので後者でしょうか。

さて、日本ではよちよち歩きのETSも、世界全体の排出量に対するカバー率は、17%に達しています。ICAPがレポートを発行し始めた2014年は8%でしたから、10年で2倍になった計算。

GDPで55%、人口で1/3を占める国・地域がETSを導入しています。
日本にいると全く気づきませんが、ETSは脱炭素化の主要な手段として位置づけられているのです。

ETSが実施されている(In force)、の国・地域は、2014年の13から、2023年は28と倍増以上。2022年からも、1地域(ワシントン州)、2カ国(オーストリア、モンテネグロ)増えました。

ETS空白大陸だったアフリカでも、ナイジェリアが、昨年22年8月、国内ETS設立に向けた活動を開始したことを発表しました。21年11月に設立された気候変動国家評議会が制度策定を担当。スケジュールやセクターの範囲など、主要な設計要素はまだ決定されていませんが、期待したいですね。

ETSと言えば、やはり気になるのが、欧州のCBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism 炭素国境調整措置)との関係。

CBAMの対象とならない地域は、EUーETS同等の制度を有している国・地域で、現在のところ、スイスのみのようです。

EY税理法人資料より

今年23年10月から報告義務が始まり、26年からは、対象品目をCBAM対象国・地域からEU-ETS域内へ輸出する際には、「CBAM Certificate」を購入しなければなりません。

CBAMについては、5回シリーズで詳しく説明しておりますので、こちらを参照下さい。

上述のように、28の国・地域が既にETSを導入済ですが、これから、EUのお眼鏡にかなうのは、どこでしょうか。UK-ETSも対象外となっていないところからすると、日本のGX-ETSは望み薄でしょうか。

まぁ、現在の対象品目(セメント・電力・水素・肥料・鉄鋼・アルミニウム)であれば、影響は2%弱ということですので、当面は様子見でいいかもしれませんが、今後、化成品が対象になるとの噂もあり、その場合は9%に跳ね上がるとか。ウォッチングはしておくべきですね。

次回は、排出権価格や各国のETSの特長についてお話ししたいと思います。


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