2023年のVCMを振り返ってみよう(2)
cCarbonが、2023年のVCMについて分かりやすくレビューをしてくれていました。ですので、それを参照しつつ、個人的なコメントも織り交ぜて、お届けしております。
前回は、カーボン・クレジットの償却量(二度と使えなくする処理で、利用量と考えてもらってよいです)について説明しました。今回は、その種類と発行量について見ていきたいと思います。
方法論毎の発行量がこちら。
2020年から2023年までの4年間という短い期間ですが、再エネ導入からREDD+、そして高効率機器への更新へと、主役が変遷しているのが見てとれます。
再エネは、2020年には全体の約1/2を占めていましたが、2023年には約1/3に減少。他方、2023年は高効率機器が存在感を示し始めたところ。
とはいえ、その発行量はまだ、それまでの2大方法論をカバーするほどではないため、全体量として減少傾向。特に、REDD+の増減が全体の増減に響いていると言っていいでしょうね。
これは主に、VerraとGSが2020年以降、期限が終了した再エネクレジットを更新せず、新規発行もLDCs以外では行っていないこと、CARとACRは、風力や太陽光のプロジェクトの発行をしていないこと、という4大クレジットの動きが要因と分析しています。
ウォッシュ批判に晒されているのが、REDD+や大型風力、メガソーラーなどだったりするので、それらのプロジェクトの検証や、そのフィードバックを受けた方法論の改訂などが優先されている状況があるのだろうと推測します。
そうはいいながらも、「Energy Efficiency」という、削減回避系のクレジットが台頭しているのは、ちょっと腑に落ちません。ネットゼロに寄与しないクレジットがこの先需要が伸びるとは思えないからです。
ですが、その大半がアジア及びアフリカにおけるクックストーブとのことなので、納得。これまで、調理に炭を使っていたところ、効率のよいストーブに更新することによって削減(回避)されたクレジットですから。QOLの向上に繋がるクレジットは、ウェルカムですね。
続いて、国別の発行量です。
インド、中国の再エネプロジェクトが支配的であるものの、前述のように、減少傾向。他方、US、トルコ、ブラジルペルーによる発行が急増。USは2021年から2023年にかけて2倍以上になった模様。
これら主要発行国によるクレジットの内訳としては、インドはcookstove、中国はバイオガス、中国及びトルコは廃棄物処理だったとのことです。「再エネ系がウォッシュ批判に晒されている間に、あまり目をつけられていない方法論で稼ぐ」みたいなことになっていなければよいですが。
クレジット制度(スキームオーナー)別の発行量がこちらですが、はっきり言って、Verraの独り勝ちです。よくBig4と呼んだりしますが、GS、ACRそしてCARのその他3は、この程度なのです。全体量が減る中、増やしてはおりますが。
しかし、Verraについては、スキームオーナーというよりも、管理者という立場であることに留意する必要があります。Verraは、VCS、CCB Standards、SD VIStaなどのプログラムの運営を担当し、炭素クレジットの認証と監査プロセスを管理していますが、開発主体ではありません。
例えば、VCSは、The Climate Group、the International Emissions Trading Association(IETA)、およびWorld Business Council for Sustainable Development(WBCSD)によって共同で開発されたものなのです。
ですので、よい例えではありませんが、買収によって規模を拡大するVerraと、地道に自社で事業領域を拡大していくその他Big3、といった感じでしょうか。
ただ、VCMのスキームを開発することと、それを管理することは別です。脱炭素化や温暖化対策、あるいは、地域の人々の生活向上に資するクレジットを模索し開発していくことに専念したい事業者にとっては、Verraのようなプレーヤーがいてこそ、本業に注力できる訳ですから。
ということで、発行量の内訳、特に内容について見てきました。
この4年を見るだけでも、方法論やプレーヤー、使用しているクレジットスキームなど、多様になっていることが、分かってきましたね。
次回は、発行量の時期的な内訳をご紹介したいと思います。
もう少し、お付き合い下さい。