スコープ1・2と温対法報告の違い
温対法の報告は7月末まで。CDPの回答は7月27日まで。
担当部署の方は、集計・算定真っ盛りではないでしょうか。
いずれもWEB上で提出できますから、以前よりは楽になったとは言え、CDPは今年からという方も多いでしょうから、大変なことには変わりないかも。
さて、実務を行っていると、次々に現れる「???」
実際、私の所にも矢継ぎ早に問い合わせメールが届きます。
すぐに回答できるものもありますが、後日ということも普通にあります。
ファクトを抑えておかないと、自信持ってお応えできないですからね。
ということで、頂いた質問の山からひとつまみ。
「スコープ1と2と温対法報告って何が違うんですか?」
色々な相違点はありますが、留意して欲しい点だけをお伝えします。
(以降、スコープ1・2:GHGP 温対法報告:SHK制度)
1.GHGPは、海外も含みます。
GHGプロコトルでは、国などを問わず、自社の主な拠点が全て対象です。
自社の連結範囲の報告がメインとなり、子会社等も含めます。
影響が小さいものは除外できますが、「重要性に関わる活動や排出源は除外してはいけない」とされます。なお、排出量が全体の何%以下ならOKか?という明確なルールはありません。組織が決定します。
他方、SHK制度は国内における事業者単位での排出量を算定します。
2.SHK制度では、算定対象活動が限定されています。
SHK制度は、マニュアルに従って算定を行いますが、対象となる活動がリストアップされていて、それぞれ、使用する原単位が決まっています。ですので、リストになければ、算定する必要がありません。
GHGPは、組織が決める少量排出源でない限り、算定するのが基本。
ただ、かなりの部分自主性に任されています。
CDPの回答に当たって、初年度は算定の仕組みがなかったためカウントしていなければ、正直に記載し、次年度以降算定することとしても良いのです。
個人的には、このGHGPの「ゆるさ」が悩みの種だと思います。
算定するかしないかを「判断」しなければならないですし、使用する「適切な原単位」を探さなければ、なければ創り出さなければなりません。
やっぱり、日本人。
「決められたこと」を「決められたとおりに行う」ことが好きなんです。
3.SHK制度では、敷地境界内における排出量のみ算定します。
ですので、公道を走る社用車によるガソリンの使用はノーカウントです。
他方、敷地内を走るフォークリフトによる軽油の使用はカウントします。
両方を明確に切り分けできないときは、一括して算定します。
まぁ、鉱山等でない限り、あまり問題にはならないでしょう。
さらに、工事現場やイベント会場などにおける直接・間接排出も算定対象外なんですね。これは、ゼネコンやハウスメーカーなどの場合は、いかがなものかと思っています。
幸い、今は、GHGPの考え方が浸透していますので、各社、敷地境界にかかわらず、自社が関与する事業による排出は削減しようとしていますので、問題ないでしょう。(法が追い付いていないだけかもですね)
4.再エネ証書の利用の仕方が異なる。
GHGPは①、SHK制度は②を採用しています。
①は、他社から供給された電力量(kWh)から購入した証書の電力量(kWh)を引き算します。
②は、他者から供給された電力量に排出係数をかけて算出したCO2量(t-CO2eq)から、購入した証書の電力量に全国平均の排出係数をかけて算出したCO2量(t-CO2eq)を引き算します。
kWhを直接マイナスするか、CO2量に換算した後に換算するかの違いです。
現在の小売電気事業者が調整後排出係数を算定する際の非化石証書の取扱いと同様であり、納得感が得られやすいからというのが理由です。
5.SHK制度では、クレジットが使える。
これが、一番大きな違いでしょうね。
SHK制度では、J-クレジットやJCMなどの認証排出削減量を利用できるんです。GHGPでは、削減系のクレジットは、かたくなに利用不可ですから。
まぁ、J-クレジット(旧国内クレジット及びJ-VER)を普及させる切り札が、「温対法の報告に使える」と言うことでしたから、その生い立ちを考えると当然ではあります。
ということで、代表的な5つの相違点、ご案内しました。
もちろん、細かい点は多々ありますが、この点に留意して算定業務を進めれば、互いにデータを利用し合うことができると思います。
効率的に、データの収集及び整理をしていきましょう。
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