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GHGPのLand Sector and Removals Guidanceは24年半ばにリリース

昨年のSBTの注目トピックの一つが、FLAG向けガイドラインのリリースだったことは、ガッテンしてもらえるところだと思います。

SBTiも、このような問題意識の元、鋭意開発を行い、タイムライン通りにファイナライズ、最終版をリリースしました。

世界の温室効果ガス排出量(GHG)の5分の1以上(22%)は、農業、林業、その他の土地利用によるものである。何千もの企業が投資家や利害関係者にGHG排出量を報告しているが、森林減少と土地利用の変化による排出量を計上したり、削減目標に含めたりする企業はほとんどない。

私としても、その内容について5回に亘ってご案内したところ。

さらに、リリースから6ヵ月の周知期間を経た23年4月1日から発効となるのに併せて、再びFLAG目標設定方法について、3回に亘ってご案内しました。

ここで、おさらいをしておくと、FLAG目標を設定しなければならない事業者の判断基準は、AとBの2種類がありました。

A. 以下の事業を行っている企業
・林産品、紙製品
・食糧生産:農業生産
・食糧生産:動物由来・食品、飲料加工
・食品小売業・たばこ

B. 以下の条件に当てはまる企業
・収入の20%以上が森林、土地、または農業に起因する
・スコープ1、2、3排出量のうち、FLAG関連排出量の合計が20%以上

また、FLAG目標の提出期限は、SBT認定を受けた期日にしたがって、下記のように異なっていました。

・2020年1月以前に目標設定した企業
 →2023年12月31日までに、エネルギー/産業目標更新+FLAG目標提出
・2020年1月〜2023年4月30日に目標設定した企業:
 →2024年12月31日までにFLAG目標を追加
・2023年4月30日以降に、新規で目標設定する企業
 →エネルギー/産業目標+FLAG目標を最初から同時に提出


さて、ここで、GHGプロトコルで開発中の、Land Sector and Removals Guidanceについて考えてみましょう。

SBTiがリリースしている、FAQにはこのような説明があります。

FLAG Project FAQsより

つまり、SBTiのFLAGは「目標設定の方法」であり、GHGプロトコルのLand Sector and Removals Guidanceは「GHG算定の方法」なのですね。

ですので、互いに密接に協力しながら開発がなされ、最終版のLand Sector and Removals Guidanceに、現在公開されているドラフト版から変更があれば、それに併せてFLAGも改訂されるのです。

FLAG Project FAQsより

そのため、Land Sector and Removals Guidanceがリリースされるまでは、FLAG目標を設定したとしても修正が必要になる訳であり、「いつリリースされるのか」が注目されてきました。

その時期については、色々なところでアナウンスされていました。

GHGプロトコル公式ウェブサイトより
2023年3月28日付けGHGプロトコル メルマガより

大本営のGHGプロトコルは、遅くとも2023年中という認識だったようです。

他方、SBTiは、このように、2023年半ばまでにリリースと考えていたようです。

SBTi FLAG Guidanceより
2023年3月14日開催FLAGウェビナーレジュメより

果たして、GHGプロトコルから、6月26日に開発状況のアップデートが公表されました。それによると、「最終ガイダンスは2024年半ばに発行される予定である 」とのことでした。

昨年実施された、 パイロットテスト・グループによるドラフトの試行とレビュー・グループのメンバーから寄せられたフィードバックから浮かび上がったトピックが非常に多かったようです。

それらは、以下の11の主要なトピックに集約され、夏の間、これらのトピックに関連する疑問を解決するために、技術作業部会に、11のサブグループが招集される予定とのこと。

・生物起源排出物
・バイオメタン
・データと方法
・地中貯留と技術的CO2除去
・土地の境界とトレーサビリティ
・土地の排出と除去 - 林業
・土地の排出と除去 - 農地
・土地利用変化と土地追跡
・製品保管
・撤去と永久保存
・スコープ2と水力 発電

このように、技術作業部会が扱うべきトピックの数が多く、トピック間の相互関連性があるため、GHGプロトコルは、Land Sector and Removals Guidanceの発行スケジュールの更新に至ったとしています。

アップデートされたスケジュールは、このようになっています。

説明してきたように、SBTiとGHGプロトコルは、FLAGセクターからの排出量算定とFLAG目標設定との間の整合性を確保するために、これらの活動で協力してきた経緯から、GHGプロトコルのスケジュール変更を受け、SBTiもタイムラインの更新を発表しました。

具体的には、こちら。

・FLAG目標を提出する必要のあるSBT目標を持つ企業は、Land Sector and Removals Guidanceの最終版がリリースされてから6ヶ月以内に提出しなければならない。
・SBT目標を初めて設定する企業、または既存の目標を更新する企業は、Land Sector and Removals Guidanceのドラフト版を使用して設定したFLAG目標を、提出/再提出しなければならない。これにはネットゼロ目標を提出する企業も含まれる。2023年4月30日以前に目標を提出し、検証枠を予約した企業は影響を受けない。

2023年6月30日 SBTiブログより
2023年6月30日 SBTiブログより

まぁ、結局は、最終版を使用してFLAG目標を設定することが義務化される時期が変わるだけで、当初の日限が変わる訳ではありませんので、ご注意を。

特に、2024年12月31日までにFLAG目標の提出が義務となっていた企業の中には「最終版が出てから」と考えていたという企業もあったかもしれませんが、待っていては間に合わないかもしれませんので、お気をつけ下さい。さっさと、始めてしまいましょう。

ということで、周りの状況に左右されずに、できるところから少しずつでも着手していくことが吉です。とにかく、FLAG排出量の算定と目標設定はタフワーク。後で泣きを見ないで済むように、明日からでなく、今日から始めましょう。

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