排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1①
それでは、スコープ3に入っていきましょう。
まずは、カテゴリー1「購入した物品・サービス」です。
スコープ3基準での定義は、こうなってます。
算定する際、最も精度が高い方法は「積み上げベース」です。
サプライヤーに算定をお願いして、排出量データを入手する方法です。
具体的には、赤枠で囲んだデータを依頼します。
場合によっては、サプライヤーにとってのカテゴリー9「輸送・配送(下流)」
まで含めることもあるかもしれません。
しかしながら、これは多大なマンパワーを必要としますし、コストもかかります。実務においては、「産業連関表ベース」になるかと思います。
世の中に存在する殆ど全てのデータが把握できるというメリットがありますが、精度が落ちることは認識しておきましょう。この手法を採用している限り、排出量を削減するには「リデュース」しかありません。
さて、カテゴリー1で算定する「物品・サービス」には、
1.製造に関連した調達(直接調達)
2.製造に関連しない調達(間接調達)
があることに、お気づきの方もいらっしゃるかと思います。
1は原料や組み込みユニットなどの「中間製品」のこと。自社で製造あるいは組み立てられて出荷されていきます。
2はいわゆる「資材」ですね。工場や事務所で消費される物品で、例えば、事務用品やパソコン、プリンターなどなど。
企業によっては、1は製品原価に係わるので購買部、2は会社の運営に係わるので総務部、などのように別の部署が管理しているかもしれません。
カテゴリ1は金額ベース(=産業連関表ベース)を採用することが多いでしょうから、データを効率的に収集するしくみ上、分けておいた方がよいかもです。
ところで、2においては、カーボンフットプリントを利用するのも手です。
数は多くないものの、製品に排出量が記載されていますし、より排出量の少ない商品を選択すれば、ラクして自社の排出量を削減できます。
しかしながら、カーボンフットプリントだと、使用及び廃棄段階の排出量も含まれています。つまり、ダブルカウントが発生するということです。
このプログラムの目的が、「事業者においては、さらなる削減行動を実施し、社会的責任を果たすこと」及び「消費者においては、自らの生活スタイルの変革を行い、これを通じて環境負荷の低減を図ること」であることから、当然なんですね。
ダブルカウントを回避しようとすると、スコープ1、2及びカテゴリー5「事業から出る廃棄物」などを考慮する必要が発生します。
しかしながら、個人的には、ダブルカウントを気にせず算定しても良いのではと考えます。次回以降、より排出量の少ない商品を選んで購入することにより、確実に削減していくことができますから。それが、カーボンフットプリントの目的にも、バリューチェーン排出量算定の目的にも合致します。
なお、購入した製品の使用からの排出量は、スコープ3よりも、スコープ1(例えば燃料使用の場合)、あるいはスコープ2(例えば、電力の使用)のいずれかで算定します。
カテゴリー1はカテゴリー2と共に、採用する手法の違いにより算定結果が大きく変動するカテゴリです。最初はあまり拘らず、カバー率を上げて「ざっくり」見積もることに注力しましょう。スキルが上がれば、どんどん減らすことができる、やりがいのあるカテゴリーです。頑張りましょう。